首飾りはブラックホール?天の川を翔(かけ)る白鳥はくちょう座




夏の夜空と言えば何を思い浮かべるでしょうか?
夏は天の川が良く見える季節です。天の川に橋を架けるように羽を広げた白鳥、そんな形の星座がはくちょう座です。
はくちょう座の基礎情報
星座の名前 | はくちょう(白鳥) |
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学名/読み方 | Cygnus/キグヌス |
略符 | Cyg |
面積(順位) | 804平方度(16位) |
作ったひと | プトレマイオス・クラディオス(トレミー) |
おすすめの 観測時期 |
夏/9月頃 |
20時南中 | 9月25日 |
隣り合った星座 |
ケフェウス座 こと座 こぎつね座 とかげ座 ペガスス座 りゅう座 |
はくちょう座の概要
はくちょう座の特徴
夏の大三角をつくる1等星「デネブ」。天の川は淡くて都会では分かりにくいのですが、夏の星座の目印である「夏の大三角」は明るい町の空でも簡単に見つけることができます。
こと座のベガ、わし座のアルタイル、そしてはくちょう座のデネブを結んでできる三角形が夏の大三角です。この三角形の真ん中を天の川が流れています。
ちなみに七夕の織姫星はこと座のベガ、彦星はわし座のアルタイルです。
「北十字星」とも呼ばれる
はくちょう座のうち比較的明るい5つの星を繋ぐと十字型に見えます。この十字型の星の並びを、北十字星ということがあります。
南半球に有名な星座「南十字星」があるので「北」の字が付けられています。南十字星は有名な割には小さく明るい星もないのであまり目立ちません。
北半球で見える北十字星の方が10倍も大きく、星の並びも美しく見えます。
はくちょう座の見つけ方
まずは夏の大三角を見つけましょう。3つの明るい星のうち天の川の中で輝いているのがデネブです。

デネブを頂点とする大きな十字を見つければ、翼を広げて天の川を下っていく、はくちょう座の全容を描くこともたやすいでしょう
はくちょう座の見どころ
最も美しい二重星「アルビレオ」

アルビレオ / Richard Yandrick (Cosmicimage.com) / 出典:NASA
はくちょう座にある天体で有名なものとしては、くちばしのところに輝くアルビレオが見ものです。
小望遠鏡で見ると金色の星とエメラルド色の星の色の対比が美しい二重星です。口径6cmの望遠鏡でも簡単に2つの星に分離できます。
北アメリカ星雲 NGC7000

NGC7000(右はペリカン星雲) / Scott Rosen / 出典:NASA
空気が澄んだ暗い夜であれば、低倍率の双眼鏡で確認出来る大きな散光星雲です。
条件次第では肉眼でもうっすら見えます。
淡い天体ですが、デネブのすぐ西に位置していて見つけやすく、隣にはペリカン星雲もあるので、見ごたえもたっぷりです。
網状星雲 NGC6992~6995、NGC6960

NGC6992~6995、NGC6960 / T. A. Rector (U. Alaska), WIYN, NOAO, AURA, NSF / 出典:NASA
白鳥の西側の翼の南にある、向かい合った2つの散光星雲群を総称して網状星雲と呼びます。天体ファンには写真に撮りやすい星雲として知られている星雲です。
網状星雲は2万年前に太陽の25倍もの重さの星が超新星爆発したときの残骸でできていて、今も膨張を続けています。
北アメリカ星雲と同様にとても淡いので、肉眼で見たいなら空が暗い場所で空気の澄んだ夜を選んで観測しましょう。
ブラックホール「はくちょう座X-1」

はくちょう座X-1 / NASA, ESA, Martin Kornmesser (ESA/Hubble) / 出典:ESA/Hubble
はくちょう座の首の辺りにあるX線天体「はくちょう座X-1」は、最初に見つかったブラックホールとして有名です。
ブラックホールは光さえ吸い込む「黒い穴」なので当然肉眼では見つけることが出来ませんが、ブラックホールに落ちるガスは落下のエネルギーによって加熱され、光を放ちます。
物体から出る光の種類は、物体の温度によって決まります。温度の高い順に、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波です。可視光線は目に見えますが、それ以外は目には見えません。
ブラックホールを取り巻くガスは非常に高温になっているので、X線を放射します。このX線を観測することでブラックホールを間接的に「見る」ことが出来るのです。
はくちょう座の神話・伝説
七夕伝説
中国から東アジア各地に伝わった七夕伝説。旧暦の7月7日(現在の8月7日前後)の夜は、天の川に隔てられてしまった織姫と彦星が、年に一度会うことができる特別な日です。
はくちょう座は、彼らが天の川を渡るために橋をつくるカササギの姿がモチーフになっているといわれています。
ゼウスが変身した白鳥
ギリシャ神話では、はくちょう座は大神ゼウスが変身した姿だとされています。
なぜ白鳥に変身しているかと言えば、美女に近づくためなんですね。その美女というのはスパルタの王妃レダです。
水浴びしているレダを天上から見つけたゼウスは美しい白鳥に姿を変えてレダのいる泉に舞い降ります。レダはその正体がゼウスとも知らず白鳥をやさしく抱き寄せてしまいます。
その後レダはふたつの卵を産み、その片方から、ふたご座のカストルとポルックスが生まれるのです。
じつは動物に化けて美女を誘うのはゼウスの十八番(おはこ)。
大きな白い牛に化けてフェニキア王の娘エウロパをさらっていったという逸話もあり、このときの牛の姿がおうし座になったといいます。
おわりに
はくちょう座は、明るい星が多くて形も整っているので、とても見つけやすい星座です。
また、はくちょう座は天の川銀河の中心方向に近いので、たくさんの星雲があります。北アメリカ星雲、網状星雲などは天体写真の定番です。
初心者から玄人まで楽しめる、はくちょう座。寝苦しい夏の夜には起きだして、はくちょう座をぜひ探してみてください。
Special Thanks
「はくちょう座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.41-78, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.114, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8