おうし座の神話・伝説
おうし座のモデルとなったのは、牛の姿に変身した大神・ゼウスです。
ゼウスは、自身が恋した娘エウロパ(エウローペー)を手に入れるために、牛に姿を変えて彼女に近づきました。
おうし座の神話・伝説
美しい娘エウロパ
あるところにエウロパ(エウローペー)という娘がいました。ファニキア王・アルゲールの娘で彼女の周りにはいつも優しくあたたかい風が吹き、花が咲きおどり、やわらかい日差しが降り注いでまるで春に愛されたような娘でした。
またエウロパは類まれなる美しさの持ち主で、その美しさは天界の神々の間でも噂になるほどです。
牛の姿でエウロパに近づくゼウス
噂は大神・ゼウスの元にも届きます。ゼウスは大変興味を持ちましたが、神としての姿のまま地上に降りてしまうと混乱を招きます。
またゼウスにはとっても怖い妻・ヘラがいました。彼女は夫の女癖の悪さにいつも目を光らせているので、ゼウスは白い牛に姿を変えエウロペの元に行くことにしました。
エウロパを攫うゼウス
野原で遊んでいたエウロパに近づく大きな牛。近くに流れる小川で水を優雅に飲み、エウロパに触れるわけでもなく近くに寝転がりゆっくり休みます。
「とてもきれいで見事な白い毛ね」
エウロパは寝転がっている牛に近づきます。牛はそのままおとなしくしているのでその背中にゆっくりと腰をおろしました。そのとたん、突然エウロパを背中に乗せたまま立ち上がります。
「えっ!どうしたの?」
驚くエウロパを乗せたまま牛は走り出します。あまりのスピードにエウロパはその角にしっかりしがみつき、振り落とされないように必死です。
広大に続く野を駆け、そびえたつ山を越え、国をひとつふたつと走り抜けていきます。
「牛さん!お願い止まって!!おろして!!」
止まることを忘れたかのように走り続ける牛に恐怖をおぼえるエウロパは懇願しますが牛はスピードを緩めることすらしません。
陸が途切れ海が現れたときやっと止まれるとエウロパは安心しかけましたが、牛はそのまま地を駆けるように海を泳ぎ大海を渡ります。もうエウロパは驚きもしません。ただその恐怖におびえ、牛の角を掴むだけです。
そして次の大陸にたどり着いた時、ようやくその足を止めた白い牛・ゼウスはゆっくりとエウロパを下ろして本当の姿を現します。
悲しむエウロパ
「美しいエウロパよ。あまりの美しさに居てもたってもいられず会いに来てしまったよ」
大神・ゼウスの姿を見せてもエウロパは悲しむばかり。天界のとても偉い神に見初められても、自分の生まれ育った国から離れてしまった悲しみの方が大きいです。
「私を故郷に帰してください」
エウロパは涙ながらにゼウスに頼みますが、ゼウスはその涙にすら見惚れてしまいます。
「ここにもあたたかい風は吹く。花も咲く。やさしい日差しも君のために降り注ぐよ」
ゼウスは根気強くエウロパを慰め続けました。彼女が再び春の風をまとい笑顔を見せてくれるその時を待ち、そしてようやく想いを伝えました。
「美しいエウロパよ。私はあなたのことを愛しています」
その後エウロパがゼウスとともにたどり着いたこの大陸は、彼女の名前から『ヨーロッパ』と呼ばれるようになりました。