ふたご座の神話・伝説
ふたご座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場するカストルとポルックスです。
とても仲の良い双子の兄弟で、どこに行くにも何をするにも一緒です。2人は武術にも優れていて、その評判は皆の知るところでした。
ふたご座の神話・伝説
双子の兄弟カストルとポルックス
白鳥に姿を変えたゼウスとスパルタの王妃・レダの間に生まれたふたつの卵がありました。そのひとつからはヘレンとクリュテムメストラという姉妹が生まれ、もうひとつの卵から産まれたのが双子の兄弟・カストルとポルックスです。
この双子の兄・カストルは人間の体に生まれ、弟・ポルックスはゼウスの血を引き不老不死の体で生まれます。体の強さに差はありましたが、ふたりはとても仲が良く日々戦いの訓練をし、カストルは剣の名人へ、ポルックスは馬術と拳闘の名人へと育ちました。
2人の武勇は評判に
ふたりは冒険に行くのもいつも一緒です。ある時金色のヒツジの毛皮を求めたイアソンが、アルゴ号遠征隊を結成しました。その冒険に英雄・ヘラクレスや琴の名手・オルフェウスたちと共に参加した時もふたりは活躍します。
冒険の途中でボクシングの達人であるビチュニアの王・アミュコスに戦いを挑まれたこともありました。アルゴ号遠征隊の中でも腕に自信のあるポルックスが名乗りを上げアミュコスを打ち負かすなど、その強さは間違いのないものです。
イダス兄弟との戦い
ある日メッシナのイダス兄弟と戦うことになったカストルとポルックスはいつも以上に苦戦を強いられました。
「兄さんはあちらから攻めてくれ。僕は馬で後ろにまわるよ!」
「ああ分かった。くれぐれも気をつけろよ?」
「兄さんこそ」
ふたりは作戦をたて、イダス兄弟に挑みます。
いつも通りに勝利を掴むはずでした。いえ、結果的には戦いは勝利に終わりました。カストルが流れ矢にあたってしまったことを除いては…。
イダス兄弟の首を取り兄の元へと戻ってきたポルックスは急いでカストルのそばに駆け寄ります。
「兄さん!兄さん!!しっかりして!」
今にもその灯火を失いそうな兄の青ざめた頬に手を当て、ポルックスは呼びかけます。カストルはその声に答えるように手を重ね、出来る限り微笑みました。弟を悲しませないために…。
それがカストル最期の微笑みでした。
「兄さん、ごめん。僕がそばにいればこんなことにはならなかったのに…」
不死の自分が矢に撃たれていたなら…。兄のそばにいてふたりで戦っていたなら…。ポルックスを後悔の闇が覆いつくします。
朝起きて兄がいないのを悲しみ、食事をして兄の笑い声が聞こえないのを悲しみ、壁に飾られた兄の剣を見て悲しみました。いつもとなりにいた自分の半身をなくしたポルックスを元気づけるものはなにもありません。
ゼウスの心を動かした兄弟愛
とうとう耐えきれなくなったポルックスは父である大神・ゼウスの所へ行きました。
「どうかお願いします!僕の不死を解いていただけませんか!!兄と生まれた時が同じなら、この命を終わらせるのも同じでいたいのです!」
ゼウスは困惑しましたが兄を慕うその気持ちに心打たれ、こう提案します。
「おまえは神の子として生まれ、そしてカストルは人の子として生まれた。
もし同じ運命をたどりたいなら、生涯の半分を天で、もう半分を地下で暮らさなければならない。それでも兄の元に行きたいか?」
「はい!また兄と居られるのならこの命すら惜しくはありません。」
ポルックスは即答しました。ゼウスはその返事に応え、兄弟に天界と黄泉の国を行き来させることにしました。
それ以来、一日の半分は天界へと昇った彼らの姿を見られるようになりました。いつまでも一緒にいる仲睦まじい兄弟の星の誕生です。