王子と勇者たちを乗せた船の船尾!美しい散開星団も楽しんでとも座
南天の星座であるとも座は、船の艫(とも)、すなわち「船尾」を表した星座です。
とも座はかつて、ギリシャ神話に登場する「アルゴ船(アルゴー船)」を表したアルゴ座(アルゴ船座)の一部でしたが、現在、アルゴ座という星座は存在しません。
面積が大きすぎるアルゴ座は、天文学者ラカイユ(ラカーユ)によって、とも座とりゅうこつ座、ほ座、らしんばん座に4分割されてしまったのです。
2等星があるとはいえ、とも座自体は決して華やかな星座ではありません。しかしとも座の周囲には、コントラストが美しい散開星団M46-M47や、神秘的な惑星状星雲NGC2438など、天文ファンの興味を引く天体がひしめいています。
とも座の基礎情報
星座の名前 | とも(艫) |
---|---|
学名/読み方 | Puppis/プッピス |
略符 | Pup |
面積(順位) | 673平方度(20位) |
作ったひと | プトレマイオス・クラディオス(トレミー) |
おすすめの 観測時期 |
冬/3月頃 |
20時南中 | 3月13日 |
隣り合った星座 |
いっかくじゅう座 うみへび座 おおいぬ座 がか座 はと座 ほ座 らしんばん座 りゅうこつ座 |
とも座の概要
とも座の特徴
とも座は、α(アルファ)星からε(イプシロン)星までの恒星が存在しないという珍しい星座です。
とも座の中で一番明るい星座は、2等星のζ(ツェータ)星「ナオス」。「ナオス」は、ギリシャ語で「船」を意味します。
このナオスを含む星々が形作るいびつな五角形が、とも座です。
とも座の見つけ方
とも座を探す際の良い目印となるのは、1等星の「シリウス」を擁するおおいぬ座です。おおいぬ座の口元にあるα星シリウスは、全天一明るく輝く恒星ですので、「見つからないかも」と心配する必要はまずないでしょう。
シリウスを中心としたおおいぬ座の形を把握したら、猟犬の尻尾で光る2等星のη(イータ)星「アルドラ」を探してみてください。とも座は、このη星のすぐそばにある天の川の中に位置しています。
南天の星座であるとも座は、日本の空では地平線スレスレにしか昇らないため、やや見つけにくいかもしれません。なるべく南の地域、もしくは、南半球の国々で観察したい星座です。
とも座の見どころ
散開星団M46-M47
M46(左)、M47(右) / Sergio Eguivar (Buenos Aires Skies) / 出典:NASA
ふたつの星団が隣り合っている散開星団M46-M47は、「とも座の二重星団」という別名でも親しまれています。
無数の細かな星々が繊細な光を放つM46は、どちらかといえば女性的なイメージ。
対するM47は、大粒の星が力強く輝く男性的な星雲です。散開星団M46-M47は、このふたつの星雲の違いが楽しめる天体です。
ぜひ、双眼鏡で同一視野に捉えて観察してみてください。
惑星状星雲 NGC2438
NGC2438 / SDaniel López, IAC / 出典:NASA
惑星状星雲のNGC2438は、前述のM46の中に確認できます。中央にある恒星から放出された赤や青緑色が入り混じるガスの様子が幻想的で、小さいながらもとても美しい星雲です。
口径が10cm程度の望遠鏡であれば、NGC2438の姿をしっかりと捉えることができるでしょう。散開星団M46-M47(とも座の二重星団)をまとめて楽しんだ後は、こうした細かな天体に焦点を絞り、じっくりと観測してみるのもいいですね。
とも座κ星
とも座のκ(カッパ)星は、明るさの近いふたつの恒星から成る二重星です。とも座κ星の主星は4.5等星、伴星は4.6等星で、ともに青白く輝いています。
小口径(5cm前後)の望遠鏡があれば、よく似たふたつの星が仲良く並んでいる様子を確認することができるでしょう。
おわりに
遥か昔にとも座が象っていたアルゴ船が登場するのは、金色の羊の毛皮を求めて旅をした王子と勇者たちの冒険譚です。
このドラマチックな神話を象徴するかのように、数々の星団や恒星がきらめくとも座の領域は、観測する私たちをワクワクさせてくれます。
Special Thanks
「とも座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.115-144, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.180, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8