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航海に不可欠な方位磁石の姿。美しい星団や星雲が見所らしんばん座

星図 星座絵 星座線 ガイド
星座絵 星座線 ガイド

らしんばん座は、冬から春先にかけて、南の空の地平線上に姿を見せる星座です。

「らしんばん」を漢字で書くと「羅針盤」、船乗りたちが航海時に使う方位磁石(方位磁針)のことを指します。星座絵には、円形や四角い形をしたレトロな方位磁石が描かれています。

もともとらしんばん座は、アルゴ座(アルゴ船座)という星座の一部でした。アルゴ座は、ギリシャ神話に登場する大型船を象った星座だったのですが、面積があまりにも広すぎました。

そこで、天文学者のラカイユ(ラカーユ)が、りゅうこつ座、ほ座、とも座、ほばしら座という4つの星座に分割したのです。このほばしら(帆柱)座が、後にらしんばん座と改名されて現在に至っています。

らしんばん座の基礎情報

星座の名前 らしんばん(羅針盤)
学名/読み方 Pyxis/ピクセス
略符 Pyx
面積(順位) 220平方度(65位)
作ったひと プトレマイオス・クラディオス(トレミー)
おすすめの
観測時期
冬/3月頃
20時南中 3月31日
隣り合った星座 うみへび座
とも座
ほ座
ポンプ座

らしんばん座の概要

らしんばん座の特徴

らしんばん座は、α(アルファ)星とβ(ベータ)星、γ(ガンマ)星という3つの4等星が一直線に並んだ形をしています。この形は、お世辞にも「特徴的である」とはいえません。

らしんばん座の直線を見て、方位磁石の姿をパッと思い浮かべられる人は少ないのではないでしょうか。どちらかといえば、今は存在しないほばしら座の方がイメージしやすい星の並び方です。

らしんばん座とコンパス座は別物!

羅針盤は、「コンパス」とも呼ばれます。ラカイユが設定した星座の中には「コンパス座」も存在し、らしんばん座と混同されることも少なくありません。

しかし、コンパス座のモデルとなったのは、航海士が海図の作成に用いるコンパス。私たちが算数の授業で円を描く際にお世話になった、あの文房具です。らしんばん座とコンパス座は全く別の星座ですので、間違えないようにしましょう。

らしんばん座の見つけ方

らしんばん座は、同じアルゴ座から分割された「とも座」と「ほ座」の間に位置しています。1等星のシリウスを持つおおいぬ座の尻尾、η(イータ)星のすぐそばにあるいびつな五角形がとも座です

一方ほ座は、りゅうこつ座の隣で円形(六角形とも)を形作っています。このふたつの星座に挟まれるようにして輝く1本の直線が、らしんばん座です。

らしんばん座には明るい星がなく、面積も元アルゴ座の星座たちの中では最も小さいため、探しにくいかもしれません。星図などを頼りに、らしんばん座の位置を把握されることをオススメします。

らしんばん座の見つけ方

らしんばん座は日本の空でも観測できますが、現れるのは南の空の地平線スレスレです。そのため、らしんばん座を探す際には、周囲に高い建物や山などがない開けた場所を選ぶようにしましょう。

また、南下すればするほど、らしんばん座をクリアに見ることができます

星座絵 星座線 星座・恒星名 ガイド

らしんばん座の見どころ

散開星団 NGC2818

NGC2818の写真

NGC2818 © NASA,ESA and the Hubble Heritage Team(STScI/AURA) / 出典:ESA/Hubble

NGC2818は、ほ座にほど近い場所に位置する散開星団です。NGC2818の明るさは9.9等級。

口径6~8cm程度の望遠鏡で覗いてみると、ぼんやりとした白っぽい雲のように見えるでしょう。構成している星々を分解して楽しみたい場合には、口径15cm前後の望遠鏡が必要です。

惑星状星雲 NGC2818A

惑星状星雲NGC2818Aは、散開星団NGC2818の中で輝いているように見えます。しかし実際には、ふたつの天体には関連性がなく、たまたま同じ方角にあるので重なって見えているだけなのです。

赤・青・緑と色とりどりのガスに包まれた、幻想的なNGC2818Aの様子を捉えた写真がよく知られています。

このNGC2818Aの姿は、太陽の行く末であるとも考えられています。

おわりに

らしんばん座は小さくて目立たない星座ですから、それ自体を目当てに望遠鏡を覗く人は少ないかもしれません。

しかし、NGC2818を始め、美しい天体が数多く輝くらしんばん座の領域は、天文ファンからの人気を集めています。

Special Thanks

「らしんばん座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。

Toxsoft: https://www.toxsoft.com/

沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
pp.9-40, 誠文堂新光社.
長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
p.180, 新紀元社.
国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
Astro Commons「星座境界線」(2016)
http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8
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