モデルは天文学者が愛用した時計!長い振り子が特徴的とけい座




とけい座は、南の空に輝く星座です。時計には、腕時計や掛け時計、懐中時計などいくつかの種類がありますが、とけい座が表している時計は、振り子時計です。
星座絵には、長い振り子を揺らしながら時を刻む時計の姿が描かれています。
とけい座のモデルとなった振り子時計は、天文学者のラカイユ(ラカーユ)が愛用した時計であると伝わっています。フランス人のラカイユは、1年間ほど南アフリカのケープタウンで暮らし、南天の星の観測に勤しみました。
ケープタウンに向かう際に、彼が相棒として持参した2台の振り子時計が、後のとけい座となったのです。その証拠に、ラカイユはもともと、「ふりこどけい座」という呼び名を付けて、とけい座を設定しています。
とけい座の基礎情報
星座の名前 | とけい(時計) |
---|---|
学名/読み方 | Horologium/ホロロギウム |
略符 | Hor |
面積(順位) | 249平方度(58位) |
作ったひと | ニコラ・ルイ・ド・ラカーィユ |
おすすめの 観測時期 |
冬/1月上旬(一部南天) |
20時南中 | 1月6日 |
隣り合った星座 |
エリダヌス座 かじき座 ちょうこくぐ座 みずへび座 レチクル座 |
とけい座の概要
とけい座の特徴
とけい座は、決して目立つ星座ではありません。
とけい座の中で一番明るく光る星はα星(アルファ星)。固有名を持たないとけい座α星は、振り子の先端で控えめに輝いています。「一番明るい」とはいっても、とけい座のα星は4等星(3.8等級)です。
α星の他は5等星以下の星々ばかりですので、肉眼でとけい座を見つけることはなかなか骨が折れるかもしれません。ただし、光こそ淡いものの、とけい座の形は「規則正しく振り子を揺らす時計」の姿をよく表しています。
とけい座の見つけ方
見つけにくいとけい座を発見するための最大の目印は、エリダヌス座の1等星「アケルナル」です。青白い光を放つアケルナルは、0.5等級という非常に明るい星ですので、簡単に位置を把握することができるでしょう。
エリダヌス座という川の終着点で輝くアケルナルと、小さなひし形が特徴的なレチクル座。このふたつの星座の間を埋めるように横たわっているのが、とけい座です。
アケルナルの近くには、振り子時計の文字盤や本体を表す「三角形の星の並び」があります。β星(ベータ星)、μ星(ミュー星)、λ星(ラムダ星)が形作る小さな三角形から長く伸びているのが、α星がきらめく振り子です。

寒い季節に真南の地平線スレスレに姿を表すとけい座は、冬の星座の仲間です。見頃は12月下旬ですが、日本の大部分の地域からは、とけい座の一部しか観測できません。
沖縄県の宮古島や石垣島まで行けば、全景を見ることが可能でしょう。暗く、周りに高い建造物などがない場所で観察してみましょう。
もちろんとけい座は南天の星座ですから、よりしっかりと観測したい場合には、南半球にある国々(オーストラリア、ニュージーランドなど)まで足を延ばされることをオススメします。
とけい座の見どころ
棒渦巻銀河 NGC1512

NGC1512 / ESA/Hubble, NASA / 出典:ESA/Hubble
NGC1512は、とけい座α星のすぐ近くに位置する棒渦巻銀河です。2400光年という直径を持つNGC1512の領域には、非常に多くの星団が存在し、新しい星々も次々に作られています。
NGC1512を観察するためには、望遠鏡が必須です。棒状構造をしっかりとみるためには、口径が25cm以上の望遠鏡を用意しておくとよいでしょう。
球状星団 NGC1261
NGC1261は、9.5等級の明るさを持つ球状星団です。1826年に、スコットランドの天文学者、ジェームス・ダンロップによって発見されました。
NGC1261を双眼鏡で覗いてみると、夜空にぽっかりと浮かぶ小さな雲のように見えるでしょう。星々を分離して観察するためには、望遠鏡(口径10cm前後)が必要です。
とけい座の神話・伝説
とけい座は18世紀にフランスの天文学者ラカイユが設定した、新しい星座です。
そのため、とけい座にまつわる神話・伝説は伝わっていません。
おわりに
ラカイユが生きた18世紀において、天文学者の必需品のひとつが振り子時計でした。時間のズレが少なく、いつも正確な時を教えてくれる振り子時計は、ラカイユにとっても頼れるアイテムだったのでしょう。
「愛用の品を、星座として永遠に残したい……」ラカイユはそう考えたのかもしれませんね。
Special Thanks
「とけい座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.115-144, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.228, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8