南天に浮かぶ大型船の帆!船乗りを惑わすニセ十字も形作るほ座
ほ座は、南の夜空にきらめく星座です。
「ほ座」と平仮名で書くと、「一体どんな形の正座なの?」とピンとこない方も多いのではないでしょうか。ほ座の「ほ」とは、船の「帆」のことです。
ギリシャ神話に登場する、王子と勇者たちを乗せて航海したアルゴー船。この船の推進力を生み出す帆の姿を表したほ座は、星々が円を描くように並んでいます。
ほ座の基礎情報
星座の名前 | ほ(帆) |
---|---|
学名/読み方 | Vela/ヴェーラ |
略符 | Vel |
面積(順位) | 500平方度(32位) |
作ったひと | プトレマイオス・クラディオス(トレミー) |
おすすめの 観測時期 |
冬/4月頃(一部南天) |
20時南中 | 4月10日 |
隣り合った星座 |
ケンタウルス座 とも座 ポンプ座 らしんばん座 りゅうこつ座 |
ほ座の概要
ほ座の特徴
南天に見られるほ座は、2等星から4等星の星々で構成される、円形(「六角形」ともいわれます)の星座です。ほ座には、α星やβ星が存在しないという珍しい特徴もあります。
ほ座はもともと、ギリシャ神話に出てくる巨大船「アルゴー船」の姿に見立てたアルゴ座(アルゴ船座)という星座の一部でした。
このアルゴ座はあまりにも巨大であったため、ほ座を含む4つの星座(ほばしら座、りゅうこつ座、とも座)に分割して観察されるようになりました。
さらにその後、天文学者ラカイユによって、ほばしら座の代わりに「らしんばん座」を加えた4星座へと分けられたのです。「相棒」とも呼べるほばしら座を失った現在でもなお、ほ座は夜空にたくましく輝き続けています。
ほ座の見つけ方
ほ座を探すには、南天の天の川に浮かぶりゅうこつ座や、みなみじゅうじ座(南十字星/サザンクロス)が良いガイド役となります。
りゅうこつ座のすぐ右上に見られる、星々が円を描くように連なった星座がほ座です。
みなみじゅうじ座から探す場合には、十字の右側の星(みなみじゅうじ座の4つの星の中では最も暗い3等星)から右方向にたどっていくと、ほ座を見つけることができます。
ちなみに、日本でほ座の全景を見たいのであれば、四国よりもさらに南へ行く必要があります。東京などからほ座を見ることも可能ですが、星座の一部しか見ることはできません。
南へ行けば行くほど、美しいほ座を観測することができるでしょう。冬から春にかけて(2~5月頃)、地平線スレスレの位置に、ほ座はその姿を現してくれます。
ほ座の見どころ
ガム星雲
ガム星雲 © Axel Mellinger / 出典:NASA
散光星雲であるガム星雲は、はるか昔に起こった超新星爆発の残骸です。赤く巨大なガム星雲ですが、非常に淡く、肉眼で見ることは困難です。
しかも、日本ではかなり南の地域で観測したとしても、低い位置にしか現れないため、ガム星雲の美しい全景を拝むことは難しいでしょう。
「ガム星雲を堪能したい!」「ガム星雲の雄大さを写真に収めたい!」こうした希望は、オーストラリアやニュージーランドなど、南半球の国々まで行けば叶えられるでしょう。
ニセ十字
ほ座とりゅうこつ座に属する星を4つ組み合わせると、十字架の形が浮かび上がります。これは、本物のみなみじゅうじ座と区別するために、「ニセ十字(偽十字)」と呼ばれています。
ニセ十字は、みなみじゅうじ座よりも星々の明るさが弱く、少しいびつな形をしているので、よく観察すると見分けることができるでしょう。
本物のみなみじゅうじ座とは異なり、南の方角を指し示さないニセ十字は、古代の船乗りたちを惑わす嫌われものでした。
しかし、みなみじゅうじ座よりも大きく、堂々と天の川に輝くニセ十字は、ほ座の見どころのひとつでもあるのです。
おわりに
天の川の中でも、ひと際明るく美しいエリアに浮かぶほ座。このページでご紹介したガム星雲やニセ十字などの他にも、ほ座の周辺には多くの星団があり、見どころ十分です。
金色の毛皮を求めてアルゴー船に乗り込んだ英雄たちのように、海を越えて沖縄や南の国々まで、ほ座を探しに旅してみてはいかがでしょうか?
Special Thanks
「ほ座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.9-40, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.180, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8