キューピットの愛の矢や座
夏の夜空の目印といえば「夏の大三角」ですが、この三角形の中に小さな星座が隠れているのをご存知でしょうか?
夏の大三角の一角、わし座のアルタイル寄りに「や座」という小さな星座が存在します。
や座の基礎情報
星座の名前 | や(矢) |
---|---|
学名/読み方 | Sagitta/サギッタ |
略符 | Sge |
面積(順位) | 80平方度(86位) |
作ったひと | プトレマイオス・クラディオス(トレミー) |
おすすめの 観測時期 |
夏/9月頃 |
20時南中 | 9月12日 |
隣り合った星座 |
いるか座 こぎつね座 ヘルクレス座 わし座 |
や座の概要
や座の特徴
や座は全天で3番目に小さい星座です。α星は「シャム」といい、アラビア語で「矢」という意味です。
5個の星がつくるY字形は愛を司る神キューピットが持つ小さな矢をかたどっています。この星の並びは意外と目立つので、簡単に矢の姿をイメージすることができます。
や座は天の川の中にあるので、この付近は双眼鏡で眺めると視野の中にたくさんの小さな星々が輝き、とてもきらびやかです。
や座のWZ星は普段は15等級と暗く、口径30cm以上の望遠鏡でないと見えません。しかし、1913年、1946年、1978年、2001年に7等級まで明るくなっています。このときには双眼鏡でも簡単に見ることができました。
WZ星は変光星の一種で、2つの星が接近して、ときおり一方の星から他方の星にガスが落ち込みます。このガスの落下エネルギー(重力エネルギー)が光に変換されて明るく輝くのです。
や座の見つけ方
や座ははくちょうざの尾にあるアルビレオと、わし座のアルタイルのちょうど中間付近に位置する星座です。
Y字型の星の並びは特徴的なので、一度場所を確認すると案外目につきやすいと思います。
や座の見どころ
ζ星(ゼータ星)
Y字のかなめの部分にある二重星です。
口径6cm程度の望遠鏡で2つの星に分離して見ることができます。
球状星団 M71
M71 © Bob Franke / 出典:NASA
や座のδ星(デルタ星)とγ星(ガンマ星)のほぼ中間にある球状星団です。
双眼鏡では少し広がりのある雲の様に見えます。口径10cm程度の望遠鏡で周辺部の星々を分離することができます。星の密集した散開星団と分類されることもあります。
おわりに
や座は、キューピットの愛の矢ということで、見つけられたら何かいいことがあるかも知れません。気になる誰かと一緒に見るといいのかな。
Special Thanks
「や座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.41-78, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.118, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8