賢者の冠!地味ながらもファンの多い星座みなみのかんむり座
プトレマイオスによって設定されたトレミーの48星座のひとつ、みなみのかんむり座。
漢字では「南冠座」と書くことからも分かるように、冠の形をしたみなみのかんむり座は、南天に控えめに輝いています。
冠をかたどった星座には、みなみのかんむり座の他に「かんむり座」もあり、両者はたびたび混同されがちです。
みなみのかんむり座はかんむり座に比べて、面積も小さく華やかさにも欠けますが、王冠を思わせる美しいラインを描いた、人気の高い星座です。
みなみのかんむり座の基礎情報
星座の名前 | みなみのかんむり(南の冠) |
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学名/読み方 | Corona Australis/コロナ・アウストラリス |
略符 | CrA |
面積(順位) | 128平方度(80位) |
作ったひと | プトレマイオス・クラディオス(トレミー) |
おすすめの 観測時期 |
夏/8月頃 |
20時南中 | 8月25日 |
隣り合った星座 |
いて座 さいだん座 さそり座 ぼうえんきょう座 |
みなみのかんむり座の概要
みなみのかんむり座の特徴
みなみのかんむり座で最も明るい星は、4等星です。このことからもお分かりいただけるかと思いますが、みなみのかんむり座は決して明るく目立つ星座ではありません。
しかし、みなみのかんむり座を実際に見てみると、暗く小さな星々がキレイな半円形に並んでいるため、意外と目を引くことに驚く人も多いのではないでしょうか。形もシンプルながら、十分に冠を連想させてくれます。
みなみのかんむり座の見つけ方
みなみのかんむり座を見つけるには、いて座を目印にすると分かりやすいです。いて座の上半身と弓の一部分を表す南斗六星よりも下(南)に、みなみのかんむり座は位置しています。
ちょうど、いて座の前足の辺りを探してみてください。半円形に輝く、小さな星たちが見えることでしょう。これがみなみのかんむり座です。
みなみのかんむり座は、7月から10月頃にかけて観測できますが、8月が最もおすすめの時期です。
日本の空でみなみのかんむり座を見ようと思ったら、高層ビルが乱立している都会の空は避けましょう。みなみのかんむり座は、地平線近くに現れます。視界を遮る高い建物のない、開けた場所での観察が適しているのです。
また、みなみのかんむり座を構成する星々は明るくないため、街灯などの少ない暗い環境を選ぶことも大切です。
みなみのかんむり座の見どころ
球状星団 NGC6541
NGC6541は、7等級の明るさを持つ球状星団です。
NGC6541の姿を堪能するのであれば、口径25cm前後の望遠鏡を用意しておくことをおすすめします。
可能であれば日本よりも、ニュージーランドなどの南半球の国々まで足を延ばした方が、NGC6541の美しさをより楽しめるでしょう。
みなみのかんむり座γ星
みなみのかんむり座の中で3番目の明るさを誇るγ星(ガンマ星)の正体は、ふたつの星が寄り添った二重星です。
それぞれの星の明るさは、4.5等級と6.5等級。
望遠鏡(口径15cm程度)があれば、みなみのかんむり座γ星をふたつに分けて観測できます。
おわりに
みなみのかんむり座は古い星座ではありますが、具体的な神話や伝承は伝わっていません。
すぐ傍に「いて座」があることから、ケンタウルス族の賢者「ケイロン(ケイローン)」が身に付けていた冠がみなみのかんむり座である、という話は残っているものの、詳しいエピソードは不明です。
いて座として夜空に輝くケイロンは、武術にも医術にも長けた優秀な馬人でしたが、不運にもヘルクレスの放った毒矢に当たり、亡くなってしまいます。
星座絵では、いて座(ケイロン)の足元に転がるかのように、逆さまの冠が描かれています。この冠は、ケイロンが矢に射られた時の衝撃で落ちてしまったのでしょうか……?
神話の残っていないみなみのかんむり座は、そんな空想で遊べる余地を私たちに残してくれているのです。
Special Thanks
「みなみのかんむり座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.41-78, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.96, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8