神を騙した王の末路?日本でも見られる南天の星座!おおかみ座
おおかみ座は、南天の星座ではありますが、日本からでも見ることが可能です。
ただし、沖縄の島々など、できるだけ南寄りの土地での観測をおすすめします。
さそり座とケンタウルス座、知名度の高いふたつの華やかな星座に囲まれたおおかみ座は、やや存在感に欠けるかもしれません。
しかし、おおかみ座は「大神ゼウスを騙したことで、獣(=オオカミ)に変えられてしまった王の姿」という、非常にドラマチックな言い伝えの残る星座でもあるのです。
おおかみ座の基礎情報
星座の名前 | おおかみ(狼) |
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学名/読み方 | Lupus/ループス |
略符 | Lup |
面積(順位) | 334平方度(46位) |
作ったひと | プトレマイオス・クラディオス(トレミー) |
おすすめの 観測時期 |
夏/7月頃(一部南天) |
20時南中 | 7月3日 |
隣り合った星座 | さそり座 じょうぎ座 ケンタウルス座 コンパス座 てんびん座 |
おおかみ座の概要
おおかみ座の特徴
南の空に浮かぶおおかみ座は、2等星や3等星などの比較的明るい星々が多いため、見つけることはそれほど難しくはありません。
隣接する星座「ケンタウルス」が構える槍の先に位置するおおかみ座は、もともとはケンタウルス座の一部として扱われていました。
しかし現在では、ケンタウルス座とは分離され、おおかみ座は独立した星座として考えられています。
おおかみ座の見つけ方
おおかみ座を見つけるには、まず、さそり座とケンタウルス座を探すとよいでしょう。
分かりやすい目印となるのは、さそり座の心臓付近に赤く輝く「アンタレス」、そして、ケンタウルス座の足元に位置する「ハダル」と「リギル・ケンタウルス」です。いずれの星も1等星ですので、簡単に見つけることができると思います。
これら3つの星に囲まれるようにしてきらめく、複数の星々がおおかみ座です。
おおかみ座は、南の空に浮かぶ星座です。南半球の方が見えやすいことは確かですが、おおかみ座は日本からでも観察することができます。
とはいえ、日本であればどこからでもおおかみ座を見られるわけではありません。北海道や北陸地方など、北寄りの地域では観測することは難しいでしょう。
おおかみ座の全景をしっかりと見たいのであれば、東京よりもできるだけ南へ行くことをおすすめします。
おおかみ座は5月から8月頃にかけて、その姿を現してくれますが、特におすすめなのは6月の初旬頃です。
なるべく雲の少ない日に、高い建物がない場所から、南の空を見上げてみてください。地平線スレスレに、おおかみ座の星たちが輝いているはずです。
おおかみ座の見どころ
さそり-ケンタウルスOBアソシエーション
おおかみ座からケンタウルス座、さらにさそり座にかけて散らばる明るい星々は、『さそり-ケンタウルスOBアソシエーション』と呼ばれます。
さそり-ケンタウルスOBアソシエーションに属する星たちは、青白い輝きが特徴的です。青い光は、これらの星々がまだまだ若いことの証明です。
さそり-ケンタウルスOBアソシエーションの星は皆、同じ時期に生まれ、同じ方向に移動していることが知られています。
おおかみ座の神話・伝説
オオカミに変えられた王・リュカオン
古代ギリシャ時代、ペロポネソス半島中央のアルカディア地方に、リュカオンという王がいました。
リュカオンには50人の息子と1人の娘がいましたが、息子たちは冷酷で意地が悪く、人々から恐れられていました。
そのため、大神ゼウスはアルカディアに降り立ち、息子たちを試すべく、旅人に変装してリュカオンを訪ねたのです。
ゼウスをもてなすため、リュカオンの息子たちはアルカディア人の男の子を殺し、その肉を混ぜた料理をふるまいました。ゼウスは大いに怒り、
「人間を殺してその肉を食べるなど、絶対に許せん!」
といって、50人のうち最も若かったニュクティモス以外の息子たちを、雷を投げて殺してしまいました。
「リュカオン、貴様も同罪だ! 悪逆非道な人間は、それにふさわしい姿になるがよい!」
そうしてゼウスは逃げようとするリュカオンをオオカミに変えてしまったのです。のちにリュカオンは空に昇り、おおかみ座になりました。
リュカオン一族はこの一件からゼウスを恐れ敬うようになり、リュカイオス山にゼウスのための祭壇(ゼウス・リュカイオス)を設けました。
この祭壇で人間を殺してその肉を食べた者は、オオカミになってしまうそうです。(一説には、ゼウス・リュカイオスがさいだん座のモデルと言われています。)
ちなみに、殺された男の子はリュカオンの娘・カリストの息子で、ゼウスによって生き返ったとする説もあります。
カリストは兄弟たちと違って心優しく美しい乙女でしたが、カリストとアルカスもまた、こののち熊に変えられる運命にありました。
ケンタウルスが狩ったオオカミ
おおかみ座は、ケンタウルスの槍に貫かれた獣の姿に見えることから、「ケンタウルスが神に捧げるために、自ら捕らえた生贄」ともみなされています。
古代の人々は、ケンタウルス座・おおかみ座・さいだん座の並びから、ケンタウルスがオオカミを狩って祭壇に捧げる様子を思い描いたのです。
おわりに
明るい星々から構成されてはいるものの、名のある恒星もなく、少々地味な印象のおおかみ座。
周りのさそり座やケンタウルス座についつい目が行きがちですが、ぜひ、おおかみ座にも目を向けてみてください。
神に人肉を食べさせた罰としてオオカミに変えられた王『リュカオン』の、愚かしくも哀れな姿が浮かんでくることでしょう。
Special Thanks
「おおかみ座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.41-78, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.132, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8