モデルは美しい極楽鳥。足を失った悲劇の鳥の星座ふうちょう座
ふうちょう座のモデルとなったのは、「風鳥(ふうちょう)」と呼ばれる鳥です。風鳥は、パプアニューギニアの国鳥として指定されており、ニューギニア島やオーストラリアの一部など、限られた地域のみに生息しています。
部位によって金や茶、黒、青などが入り混じる色鮮やかな羽毛を持つ風鳥は、「極楽鳥(ごくらくちょう)」という呼び名でも親しまれており、「世界で最も美しい鳥類」とも称えられています。
しかし残念ながら、ふうちょう座は日本では見ることのできない星座です。
ふうちょう座の基礎情報
星座の名前 | ふうちょう(風鳥) |
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学名/読み方 | Apus/アプス |
略符 | Aps |
面積(順位) | 206平方度(67位) |
作ったひと | ヨハン・バイヤー |
おすすめの 観測時期 |
夏/7月中旬(南天) |
20時南中 | 7月18日 |
隣り合った星座 |
さいだん座 カメレオン座 くじゃく座 コンパス座 はえ座 はちぶんぎ座 みなみのさんかく座 |
ふうちょう座の概要
ふうちょう座の特徴
ふうちょう座の中で最も明るい星は、4等星のα(アルファ)星です。美しく、華やかな風鳥をモデルとしている割りには、ふうちょう座は地味で目立たない星座なのです。
星の並びも、α星やβ(ベータ)星を含む7つの恒星がジグザグに並んでいるだけであり、ここから風鳥の姿を思い浮かべることは、少し難しいかもしれませんね。
「ふうちょう(風鳥)」の名前の由来
ふうちょう座の学名は「Apus(アプス/アプース)」といいます。Apusは、「足が無い」ことを意味するギリシャ語です。なにやら不思議な学名ですが、風鳥に足が存在しない訳ではありません。
しかしその昔、ヨーロッパで風鳥がもてはやされていた時代には、捕らえられた風鳥たちは足を切られた剥製の姿で輸出されていました。風鳥の生息する国では、風鳥の足が貴重な薬として用いられていたためです。
足を失った風鳥の姿しか見る機会のなかったヨーロッパの人々は、「この鳥は生まれつき、木に止まる足が無く、常に風に吹かれて空を飛んでいるのだろう」と思い込んでしまったのです。
そこから「足無し」を意味する「Apus」や、「風鳥」という呼び名が付けられました。
ふうちょう座の見つけ方
南天の星座であるふうちょう座は、日本からは全く見ることができません。
ふうちょう座を観察するためには、オーストラリアやニュージーランドといった、南半球の国へと旅する必要があります。南半球の空であれば、1年を通してふうちょう座を観測することが可能です。
ふうちょう座を探す際には、みなみのさんかく座のα星「アトリア」が目印になってくれます。2等星のアトリアは、南の空の中ではよく目立つため、苦労なく見つけられるのではないでしょうか。このアトリアのすぐ横に、ふうちょう座の頭が位置しています。
みなみのさんかく座の他、くじゃく座とはちぶんぎ座、カメレオン座、はえ座が、ふうちょう座を囲むように輝いています。
ふうちょう座の見どころ
ふうちょう座δ星
ふうちょう座のδ(デルタ)星は、ふたつの星が重なって見えるものの、地球からの距離には違いがあるという「見かけの二重星」です。主星は4.7等級、伴星は5.3等級。
ふうちょう座δ星を分離して観測するには、双眼鏡や口径5cm程度の望遠鏡があればOKです。
球状星団 NGC6101
NGC6101は、ふうちょう座の右側の翼に位置する球状星団です。NGC6101の明るさは、9.5等級。
双眼鏡でもNGC6101の光を確認することはできますが、構成する星々を個別に見るためには、口径が20cm以上の望遠鏡を用意しておきましょう。
ふうちょう座の神話・伝説
ふうちょう座は17世紀の初めにドイツの天文学者バイヤーが広めた星座です。
比較的新しい星座のため、ふうちょう座にまつわる神話・伝説は伝わっていません。
おわりに
この世のものとは思えない美しさを誇る風鳥をモデルとしたふうちょう座。多くの星座絵には、自慢の翼を広げ、長い尾羽をなびかせながら飛ぶ優雅な風鳥が描かれています。
しかしよくみると、ふうちょう座の星座絵には、他の鳥類の星座(わし座やつる座、くじゃく座など)のイラストにみられるような足が見当たりません。
「足を切り取られる」という風鳥の悲劇の歴史を知ってから見上げるふうちょう座は、美しさだけではなく、もの悲しさも感じられます。
南半球では一年を通して見られる星座なので、南半球へ旅行の折には、ふうちょう座を探してみましょう。
Special Thanks
「ふうちょう座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.145-178, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.206, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8