夜空に隠れ住む肉食獣。貴方の観察力が試される!やまねこ座
やまねこ座は、その名の通り、野性味あふれる山猫の姿を表した星座です。星座絵では、スリムな体を悠々と伸ばして夜空を駆ける山猫の様子が描かれています。
17世紀に、ポーランドの天文学者ヘベリウスによって設定されたやまねこ座ですが、当時は「山猫または虎座」というなんとも曖昧な星座名が付けられていました。
確かに、やまねこ座の星の並びは特徴的ではなく、山猫に見えるか虎に見えるかは、人によって意見が分かれそうです。
ヘベリウスがどちらの動物をメインに考えていたのかは不明ですが、現在は「虎」の名は消えて、山猫の呼び名だけが残っています。
やまねこ座の基礎情報
星座の名前 | やまねこ(山猫) |
---|---|
学名/読み方 | Lynx/リンクス |
略符 | Lyn |
面積(順位) | 545平方度(28位) |
作ったひと | ヨハネス・ヘヴェリウス |
おすすめの 観測時期 |
春/3月中旬 |
20時南中 | 3月16日 |
隣り合った星座 |
おおぐま座 かに座 きりん座 ぎょしゃ座 こじし座 ふたご座 |
やまねこ座の概要
やまねこ座の特徴
暗い星々のみで構成されたやまねこ座は、面積が広いにも関わらず、目立ちません。
やまねこ座の中で最も明るい星は、3等星のα星(アルファ星)である「エルバシャク」です。エルバシャクの他は全て4等星以下で、明るい星はありません。
そのため、やまねこ座は非常に見つけにくい星座として知られています。緩やかに波打つような星の並びにも、これといった特徴がなく、山猫の姿を連想することは難しいでしょう。
やまねこ座の見つけ方
やまねこ座の観測におすすめなのは、3月から4月頃の比較的早い時間です。夜の8時(20時)頃に、北の空を見上げてみましょう。
やまねこ座を見つけるためには、さまざまな生き物を表した星座たちが目印となってくれます。
きりん座にぎょしゃ座、ふたご座、かに座、こじし座、おおぐま座などに囲まれた、「星の非常に少ないエリア」に位置する星座がやまねこ座です。
星座絵では、やまねこ座の頭の上にはきりん座が位置し、足元にはふたご座とかに座が、背後にはこじし座がとおおぐま座が控えています。
見る人によっては、小獅子が山猫の尻尾にじゃれついているような、愛らしい光景も思い浮かぶのではないでしょうか。
やまねこ座を探す際には、なるべく灯りの少ない、暗い場所を選ぶことをおすすめします。やまねこ座の星の光は淡く見つけにくいため、明るい場所で観察してしまうと、「真っ暗な空しか見えなかった……」となる可能性もあります。
やまねこ座の見どころ
やまねこ座5番星
二重星として知られるやまねこ座5番星は、山猫のおでこの近くに輝いています。
望遠鏡(口径6cm前後)を使ってやまねこ座5番星を覗いてみると、ふたつの星に分けることができます。
オレンジ色の主星に対して、伴星は青白い色をしており、美しいコントラストを楽しめるでしょう。
やまねこ座12番星
やまねこ座の頭頂部に位置する12番星は、3つの星々から成る三重星です。
それぞれの星は、5.4等級、6.0等級、7.3等級という明るさを持っています。
口径10cmを超える望遠鏡であれば、この3つの星を分離して観察できることでしょう。
球状星団 NGC2419
NGC2419 © ESA/Hubble&NASA,S.Larsen et al. / 出典:ESA/Hubble
球状星団であるNGC2419は、やまねこ座の前足と後ろ足のほぼ中間地点に位置しています。
NGC2419は暗く(10等級)、やや儚げに映るかもしれません。
NGC2419が淡く見えるのは、私たちの住む地球からの距離が約30万光年と、球状星団の中では最も遠い場所に存在するためです。
やまねこ座の神話・伝説
やまねこ座は17世紀にポーランドの天文学者へべリウスによって設定された新しい星座です。そのため、やまねこ座にまつわる神話・伝説は存在しません。
おわりに
「やまねこ座を発見するためには、山猫並みの鋭い目を持っていなければならない」これは、やまねこ座を設定した張本人であるヘベリウスの言葉です。
やまねこ座はそれほどまでに、見つけることが困難な星座なのです。夜空に潜む山猫を探して、ご自分の観察力を試してみるのも面白そうですね。
Special Thanks
「やまねこ座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.9-40, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.190, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8