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モデルは真空ポンプ。時代の先を行く科学道具の星座!ポンプ座

星図 星座絵 星座線 ガイド
星座絵 星座線 ガイド

ポンプ座は、春に見ごろを迎える南の空の星座です。ポンプ座のモデルとなったのは、17世紀に発明され、化学的な実験に用いられていた真空ポンプ(バキュームポンプ)です。

その名の通り、真空ポンプは空気を抜いて真空状態を作り出すために使われます。日本では、ポンプ座のことを「排気器座」と呼んでいた時代もありました。

天文学者のラカイユ(ラカーユ)によってポンプ座が設定された18世紀のヨーロッパにおいて、真空ポンプは時代の最先端を行く実験機器だったのです。

ポンプ座は4等星以下の暗い星で構成されているため、はじめは見つけにくいですが、うみへび座のすぐ南、低い空に浮かんでいます。

ポンプ座の基礎情報

星座の名前 ポンプ
学名/読み方 Antlia/アンチラ
略符 Ant
面積(順位) 239平方度(62位)
作ったひと ニコラ・ルイ・ド・ラカーィユ
おすすめの
観測時期
春/4月中旬
20時南中 4月17日
隣り合った星座 うみへび座
ケンタウルス座
ほ座
らしんばん座

ポンプ座の概要

ポンプ座の特徴

ラカイユの生きた時代には、画期的な実験機器であった真空ポンプ。

そんな真空ポンプの華やかなイメージとは裏腹に、ポンプ座の星々は暗く、目立ちません。ポンプ座を構成する星の中で、最も明るい星は4等星。あとの星はほとんどが5等星です。

ポンプ座の形も、真空ポンプを連想させるようなものではありません。一番明るい4等星のα(アルファ)星を頂点として、緩やかに折れ曲がった平仮名の「へ」のような星の並びが、ポンプ座です

この形を見て真空ポンプの姿を思い描くには、豊かな想像力が必要かもしれませんね。

ポンプ座の見つけ方

春の夜、南の空に現れるポンプ座の目印となる星座は、うみへび座です。うみへび座の長い胴体の下、地平線近くに、ポンプ座は横に倒れるようにして位置しています

ポンプ座の周囲には、うみへび座だけではなく、ほ座やコップ座、らしんばん座なども見えます。

ポンプ座の見つけ方

ポンプ座の光は淡く、人目を引くような派手さはありません。しかし、ポンプ座の輝く領域には星がそれほど多くはないため、丁寧に探してみると、意外と簡単に見つけられるでしょう。

星座絵 星座線 星座・恒星名 ガイド
 

ポンプ座の見どころ

ポンプ座δ星

ポンプ座のα星のすぐ横に位置するδ(デルタ)星は、一見ひとつの星ですが、実はふたつの星からなる二重星です。

構成している星の明るさは、5.7等級と9.7等級。ふたつの星を分離して観察するためには、6~8cm程度の望遠鏡が必要です。

ポンプ座ζ星

ポンプ座のζ(ツェータ)星は、星座絵の中では、真空ポンプに取り付けられた脚の先で輝いています。ζ星を双眼鏡で覗いてみると、主星と伴星、ふたつの星に分けられます。

ここからさらに伴星を分離することができるのですが、それには小口径(6センチ前後)の望遠鏡を用意しなければなりません。分離された星々は、淡い緑と黄色に輝いており、色の違いも楽しめます。

渦巻銀河 NGC2997

NGC2997の写真

NGC2997 © FORS Team, 8.2-meter VLT, ESO / 出典:NASA

ポンプ座ζ星の近く、ポンプの脚の中央辺りに位置する渦巻銀河がNGC2997です。NGC2997の等級は10.1。

小口径の望遠鏡でもNGC2997を見ることはできますが、美しい渦巻きの様子をじっくりと観察したい場合には、口径20cm程度の望遠鏡を使いましょう。

ポンプ座の神話・伝説

ポンプ座はフランスの天文学者ラカイユによって1756年に設定された、新しい星座です。

そのため、神話・伝説は伝わっていません。

おわりに

ポンプ座を始めとして、けんびきょう座やはちぶんぎ座、レチクル座など、ラカイユの作った星座には、科学道具への愛情を感じさせるものが多く存在します。

「星が暗くて見つけにくい」「形が分かりづらい」と、あまり高い評価を受けているとはいえないラカイユの星座たちですが、彼の情熱のこもった星座は、数百年経った現在の夜空にも輝き続けています。

Special Thanks

「ポンプ座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。

Toxsoft: https://www.toxsoft.com/

沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
pp.9-40, 誠文堂新光社.
長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
p.218, 新紀元社.
国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
Astro Commons「星座境界線」(2016)
http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8
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