モデルはラクダ?改名危機を乗り越えた珍獣の星座!きりん座
星座の神秘的な雰囲気と重なるためか、中国で神獣として崇められる空想上の生き物「麒麟(キリン)」と勘違いされることもありますが、きりん座の「きりん」は動物園の人気者、黄色くて首の長い実在の動物「キリン」です。
星図には、右前足を持ち上げて伸びあがるような姿勢のキリンが描かれています。
きりん座は天の北極に近く、日本では一年中見ることができますが、暗い星ばかりの星座なので見つけるのには苦労するかもしれません。
きりん座の基礎情報
星座の名前 | きりん(麒麟) |
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学名/読み方 | Camelopardalis/カメロパルダリス |
略符 | Cam |
面積(順位) | 757平方度(18位) |
作ったひと | ヤコブス・バルチウス |
おすすめの 観測時期 |
冬/2月上旬 |
20時南中 | 2月10日 |
隣り合った星座 |
おおぐま座 カシオペヤ座 ぎょしゃ座 ケフェウス座 こぐま座 ペルセウス座 やまねこ座 りゅう座 |
きりん座の概要
きりん座の特徴
きりん座は、88星座の中でも18番目に面積の広い星座として知られています。
しかし、きりん座は非常に地味な存在です。というのも、きりん座を構成している星々はいずれも暗く、最も明るい星(β星)でも4等星なのです。
きりん座の星を辿ってキリンの全身を思い浮かべるには、想像力をフル活用する必要があるかもしれませんね。
きりん座はラクダだった?
きりん座はドイツのヤコブス・バルチウスが星図に表し、のちにヘベリウスによって正式に「きりん座」として設定されました。
実は、きりん座のモデルとなったのはキリンではなく、ラクダだったという説があります。
バルチウスはもともと、旧約聖書の中に登場する美女リベカの嫁入りを手伝ったラクダの姿をもとに、らくだ座を描いたと伝わっています。のちに星座が設定される際に、ヘベリウスが似たスペルを持つラクダとキリンを取り違えてしまい、「きりん座」としてしまったというのです。
19世紀には、「きりん座」から「らくだ座」に改名したらどうかという議論も起こりましたが、この危機も乗り越え、現在まできりん座はキリンの姿のままで夜空に輝き続けています。
きりん座の見つけ方
きりん座は、北極星(ポラリス)のすぐ傍にあるため、場所は特定しやすいです。
こぐま座の尻尾でもある北極星は、北天の星の中でも目立つため、見つけることは難しくないでしょう。北極星の横に、キリンの長い首が位置しています。
さらに、キリンの後ろ足の下には、ぎょしゃ座のカペラ(一等星)が輝いています。
きりん座の周囲は、北極星(こぐま座)やぎょしゃ座の他、カシオペア座におおぐま座、やまねこ座、ペルセウス座など、数多くの星座がきらめく賑やかなエリアです。有名で目立つ星座も多いため、光の弱いきりん座はどうしても霞んでしまいがちです。
きりん座を観察する時には、空が暗く星がよく見える日、そして周りに灯りの少ない場所を選ぶようにしましょう。
冬の星座として紹介されることの多いきりん座ですが、日本では年間を通して、きりん座を北の夜空に観測することができます。
きりん座が冬の星座とされる理由は、寒い季節に高い位置に現れて、見頃となるためです。
きりん座の見どころ
きりん座β星
きりん座β星は、きりん座を構成する星たちの中で一番明るい黄色い星です。
主星が4等級、伴星が7.4等級の二重星であり、ふたつの星を観察するためには望遠鏡(口径5cm前後)が必要です。
11番星・12番星
きりん座の後ろ足(星図では「すね(脛)」の辺り)の近くには、11番星と12番星からなる二重星も輝いています。
主星である11番星はブルー、伴星の12番星はオレンジという対照的な色を持つこれらの星は、コントラストが非常に美しいことで知られています。
この二重星の美しさを堪能するには、倍率が低めの望遠鏡がおすすめです。口径6cm程度もあれば十分でしょう。
きりん座の神話・伝説
きりん座は、17世紀のはじめに作られた新しい星座です。そのため、神話・伝説は伝わっていません。
オランダの天文学者プランキウスが天球儀に記し、ドイツの数学者バルチウスが1624年に発行した星図で世間に広まったといわれています。
おわりに
「らくだ座」への改名危機を乗り越えて、健気に輝くきりん座。
その光は淡く、見つけるのは大変ですが、夜空に広がる草原に隠れ住むキリンの姿をぜひ探し出してみてください。
Special Thanks
「きりん座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.79-114, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.190, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8