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南米の臆病な鳥!見どころは足元の小マゼラン雲!きょしちょう座

星図 星座絵 星座線 ガイド
星座絵 星座線 ガイド

「きょしちょう座」と聞いて、どんな星座なのかピンとくる人は少ないのではないでしょうか。

「きょしちょう」は、「巨嘴鳥」と書きます。日本では「オオハシ(大嘴)」と呼ばれる 巨嘴鳥は、色鮮やかな大きなクチバシを持つ鳥です。

巨嘴鳥は、ブラジルやペルー、コロンビアなどの南アメリカに生息する大型の鳥であり、日本で日常的に見られる生き物ではありません(動物園などでは飼育されています)。

きょしちょう座の基礎情報

星座の名前 きょしちょう(巨嘴鳥)
学名/読み方 Tucana/トゥカナ
略符 Tuc
面積(順位) 295平方度(48位)
作ったひと ヨハン・バイヤー
おすすめの
観測時期
秋/11月中旬(南天)
20時南中 11月13日
隣り合った星座 インディアン座
つる座
はちぶんぎ座
ほうおう座
みずへび座

きょしちょう座の概要

きょしちょう座の特徴

きょしちょう座は、決して目立つ星座ではありません。きょしちょう座の中で最も明るいα星でも3等星、他の星々は4等星以下の暗い星ばかりです

華やかな姿の巨嘴鳥とは対照的に、明るい星のないきょしちょう座は、どちらかといえば地味な星座です。

しかし、きょしちょう座の近くには有名な小マゼラン雲があり、そのお陰できょしちょう座も、ある程度の存在感を放っています。

きょしちょう座のひらがなの「へ」の字のような星の並びは特徴的ではあるものの、この形から巨嘴鳥を思い浮かべるのは難しいかもしれませんね。

きょしちょう座の見つけ方

南天の星座であるきょしちょう座は、残念ながら日本からではごく一部しか見ることができません。

しかも、日本できょしちょう座を観測しようと思ったら、鹿児島県の奄美大島や沖縄県まで足を延ばす必要があります。それでも、限られた季節(秋)の地平線スレスレに、きょしちょう座の姿がわずかに見える程度でしょう。

きょしちょう座の全貌を見るためには、南半球の国に行きましょう。オーストラリアであれば、年間を通してきょしちょう座を観測できます(見頃は現地の春です)

きょしちょう座は、みずへび座、エリダヌス座(1等星のアケルナル)、つる座、インディアン座などに囲まれたエリアの中央付近に位置しています。

きょしちょう座の見つけ方

また、きょしちょう座の足もとにある、ぼんやりとした雲のような小マゼラン雲も、よい目印となるでしょう。

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きょしちょう座の見どころ

小マゼラン雲

小マゼラン雲の写真

小マゼラン雲 © ESA/Hubble and Digitized Sky Survey 2. / Acknowledgements:Davide De Martin / 出典:ESA/Hubble

きょしちょう座の輝くエリアは、星々が少なく寂しい場所です。

しかし、南天の大きな見どころのひとつである小マゼラン雲があります。「雲」という名を冠する小マゼラン雲ですが、実際は雲ではなく、私たち人間が住む銀河系の周りを回っている「伴銀河」です。

小マゼラン雲を確認する時には、きょしちょう座の足もと近くを見てみましょう。小マゼラン雲はその名の通り、肉眼では夜空にボーッと浮かぶ「雲」のように見えます。

街灯やビルの明かりの多い場所では、小マゼラン雲を確認することは難しいため、できるだけ暗い場所で観測するようにしましょう。

小マゼラン雲に属する星々を見るためには、口径20cm前後の望遠鏡を用意することをおすすめします。

NGC104

NGC104の写真

NGC104 © NASA, ESA, and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration / Acknowledgment:J. Mack (STScI) and G. Piotto (University of Padova, Italy) / 出典:ESA/Hubble

NGC104(別名:きょしちょう座47番星)は、およそ15万個の星々が集まった球状星団です。全ての球状星団の中で、2番目に明るい存在であるNGC104は、小マゼラン雲のすぐそばで輝いています。

肉眼でNGC104を確認すると、ひとつの4等星のように見えることでしょう。NGC104を構成する星々を細かく観測したい場合には、望遠鏡(口径10cm前後)が必要です。

きょしちょう座の神話・伝説

きょしちょう座は16世紀の終わりから17世紀のはじめに設定された、新しい星座です。そのため、きょしちょう座にまつわる神話・伝説は存在しません。

オランダの航海士ケイザーとホウトマンは、インドから東南アジアを航海して、南天に12個の星座を作りました。きょしちょう座もそのうちのひとつです。これらの星座は17世紀にドイツの天文学者バイヤーが星図に採用して、広く知られるようになりました。

おわりに

きょしちょう座の周りをよく見てみると、つる座やくじゃく座、ふうちょう座など「鳥の星座」が多いことに気付くでしょう。

巨嘴鳥の性格は、臆病で寂しがり屋だといわれています。きょしちょう座の周囲の鶴や孔雀たちは、そんな巨嘴鳥をそっと見守るかのように取り囲んでいます。

Special Thanks

「きょしちょう座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。

Toxsoft: https://www.toxsoft.com/

沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
pp.145-178, 誠文堂新光社.
長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
p.210, 新紀元社.
国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
Astro Commons「星座境界線」(2016)
http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8
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