モデルはフェニックス。燃え尽きても蘇る不死の象徴!ほうおう座
秋ごろに南の空に姿を現すほうおう座(鳳凰座)は、不死鳥であるフェニックスをモデルにした星座です。エジプトが起源とされるフェニックスは、想像上の美しい鳥です。
「火の鳥」という呼び名の方が馴染みがある、という方も多いかもしれませんね。500年間生きたフェニックスは、炎の中で一度は燃え尽きますが、残った灰から再び再生し、永遠の命を生きると伝えられています。
ほうおう座はその名称から、中国の伝説の鳥「鳳凰(ほうおう)」の姿であると勘違いされがちです。しかし、ほうおう座のモデルはエジプト生まれのフェニックス。幸福や吉報をもたらすといわれる中国の鳳凰とは異なる鳥です。
中国生まれの鳳凰は、鶏や金鶏(キンケイ)がモチーフとされ、一方エジプトのフェニックスは鷹(タカ)や鷺(サギ)に似た姿であるという違いもあります。
ほうおう座の基礎情報
星座の名前 | ほうおう(鳳凰) |
---|---|
学名/読み方 | Phoenix/フェニックス |
略符 | Phe |
面積(順位) | 469平方度(37位) |
作ったひと | ヨハン・バイヤー |
おすすめの 観測時期 |
冬/12月上旬(一部南天) |
20時南中 | 12月2日 |
隣り合った星座 |
エリダヌス座 きょしちょう座 ちょうこくしつ座 つる座 ろ座 |
ほうおう座の概要
ほうおう座の特徴
明るい星から構成されるほうおう座は、比較的分かりやすい星座です。
ほうおう座の中で最も明るい星は、フェニックスの頭部、もしくは左側の翼(星座絵によって異なります)に輝く2等星のα(アルファ)星「アンカー」です。
このα星と、ふたつの3等星などを含む7つの星を繋ぎ合わせると、翼を広げたフェニックスの姿が浮かび上がります。
ほうおう座の見つけ方
ほうおう座の見頃は秋、20時南中は12月2日です。
日本国内でほうおう座の全景が見られるのは、鹿児島県よりも南の地域に限られます。もしも東京でほうおう座を観測しようとしても、その姿の一部しか目にすることはできません。
南天に輝くほうおう座は、オーストラリアなど南半球の国へ出かけた方がよく見える星座なのです。日本でほうおう座を見るのであれば、南の空の地平線付近に注目してみましょう。
地平線スレスレに輝くつる座のふたつの2等星、α星(アルナイル)とβ(ベータ)星(ティアキ)が確認できたら、さらに東の方角に目をやると、ほうおう座のα星(アンカー)が見えてきます。
ほうおう座の全体的な星の並びは、3等星と4等星から作られるひし形から、真っすぐな線と、α星を含む折れ曲がった線が1本ずつ伸びたような形をしています。
低い位置で光るほうおう座を見つけるためには、南の空を遮るもののない、できるだけ開けた場所から観察することが大切です。
ほうおう座の見どころ
α星
ほうおう座のα星「アンカー」は、よく目を引く2.37等級の巨星です。アンカーという固有名はそのものズバリ、「不死鳥」を意味します。
赤く輝くアンカーは、炎の色をした翼を持つと伝わるフェニックスを象徴するかのような星です。
ほうおう座α星には、「ナイル・アル・ザウラク」という別名も存在します。この呼び名は遥か昔、ほうおう座α星を含む複数の星の並びが、船底に見立てられていたことに由来します。
ζ星
ほうおう座ζ(ツェータ)星は、4等級と7等級の星から成る二重星です。
望遠鏡(口径8cm前後)で覗いてみると、青白く光る主星に寄り添うように、小さな伴星が控えめに輝いている様子が見られるでしょう。
ほうおう座ζ星は、2017年に「Wurren」という固有名が付けられました。この固有名は、オーストラリアの先住民の間で呼ばれていた名がもとになったといわれています。
ほうおう座の神話・伝説
ほうおう座は16世紀末~17世紀のはじめに作られた、新しい星座です。そのため、ほうおう座にまつわる神話・伝説は伝わっていません。
16世紀の終わり、オランダの航海士ケイザーとホウトマンが南天の星々を観測し、ほうおう座を含む12個の星座を作りました。ホウトマンの師で、天文学者のプランキウスは彼らの作った星座を天球儀に記して発表しました。さらに1603年、ドイツの天文学者バイヤーが星図に採用したことで、世間に知られるようになったのです。
おわりに
フェニックスは、エジプトの聖なる鳥「ベヌウ(ベンヌ/ベヌ)」がモデルになったと考えられています。
ベヌウは太陽神ラーの魂であるとされ、日没とともに滅び、日の出とともに復活する存在です。
朝日と強い結び付きを持つベヌウを下敷きにして生まれたフェニックスが、星座として夜空に輝いているというのは、なかなか面白い対比ではないでしょうか。
Special Thanks
「ほうおう座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.79-114, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.212, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8