天文学のシンボル「鶴」の姿。トリオの銀河も見所です!つる座
秋の夜、南の空に低く輝く星座がつる座です。つる座の「つる」とは、大型の鳥類「ツル(鶴)」を意味しています。
15世紀頃には既に、ヨーロッパの船乗りたちの間で「フラミンゴ座」として親しまれていたつる座。人によっては「さぎ座」とも呼んでいたとか。
「つる座」が正式な呼び名として世の中に広まったのは、17世紀に著されたバイエルの星図がきっかけでした。
つる座の基礎情報
星座の名前 | つる(鶴) |
---|---|
学名/読み方 | Grus/グルス |
略符 | Gru |
面積(順位) | 366平方度(45位) |
作ったひと | ヨハン・バイヤー |
おすすめの 観測時期 |
秋/10月下旬(一部南天) |
20時南中 | 10月22日 |
隣り合った星座 |
インディアン座 きょしちょう座 けんびきょう座 ちょうこくしつ座 ほうおう座 みなみのうお座 |
つる座の概要
つる座の特徴
つる座は、明るい星が多いことや、星座としての形がきれいに整っている(=分かりやすい)ことで知られています。これは、南の空の星座の中では、比較的珍しいことです。
つる座の2等星のα(アルファ)星「アルナイル」と、β(ベータ)星の「ティアキ」、そして3等星のγ(ガンマ)星「アルダナブ」。この3つの星が特に目を引きます。
つる座の翼に光るアルナイル、胴体を表すティアキ、頭部のアルダナブが交差した十字の形は、翼を広げて立つ鶴の姿を現しています。
ちなみに、アルナイルの語源は、アラビア語で「輝く魚の尾」、アルダナブは「尻尾」です。この名が示す通り、つる座の星たちは本来、傍で輝くみなみのうお座の一部だったのです。
つる座の見つけ方
つる座の見ごろは10月下旬です。周囲に高い建造物のない、できるだけ開けた場所から南の空を見上げてみましょう。
つる座を見つけるには、みなみのうお座のα星「フォーマルハウト」を目印にすると分かりやすいでしょう。南の空に輝くフォーマルハウトは、秋に観測できる星々の中ではただひとつの1等星であり、とても目立つ存在です。
みなみのうお座の口を表すフォーマルハウトから、ググッと視線を下げると、地平線スレスレの位置につる座の2等星「アルナイル」と「ティアキ」が見えます。
青白いアルナイルと、赤みがかったオレンジ色のティアキのコントラストは美しいので、だいたいの場所が分かれば、見つけることは難しくはないでしょう。背伸びをした鶴が、頭上を泳ぐ魚を狙っている様子を思い浮かべてみると、みなみのうお座とつる座の位置関係が把握しやすくなるかもしれませんね。
日本でつる座を観測するのであれば、沖縄県の空をおすすめします。東京や、東京よりも北の地域では、つる座の全景を見ることは難しいためです。
また、できるだけ南の地域で見た方が、つる座を構成する星々の本来の明るさを楽しめます(地平線に近ければ近いほど、地球の大気の影響を受けて、星が暗く見えてしまうのです)。
つる座の見どころ
つる座δ星
つる座のδ(デルタ)星は、鶴の胸の中央で輝く二重星です。
どちらの星も4等級の明るさですが、黄色い主星に赤い伴星と、その色味には違いがみられます。望遠鏡や双眼鏡を使わなくてもふたつの星に分けることができるδ星は、気軽に楽しめる二重星のひとつです。
NGC7582、NGC7590、NGC7599
つる座の右側の翼近くには、NGC7582、NGC7590、NGC7599という3つの銀河が存在します。これら銀河の白い棒状の姿を見るためには、口径15センチ程度の望遠鏡を用意しておきましょう。
非常に近い位置に存在するNGC7582とNGC7590、そしてNGC7599には、「つる座のトリオ銀河」という愛称が付けられています。
さらにここに、お隣のNGC7552(棒渦巻銀河)を加えて、「つる座の四重銀河」や、「つる座のカルテット(四重奏)」と呼ぶこともあります。
つる座の神話・伝説
比較的新しい星座なので、つる座にまつわる神話・伝説はありません。
つる座は16世紀の終わりにオランダの航海士ケイザーとホウトマンによって作られた星座です。17世紀のはじめにドイツの天文学者バイヤーが星表に取り上げたことで広まりました。
おわりに
天高く舞い上がる鶴は、古代エジプトにおいて天文学者や天体観測の象徴でした。
バイエルがフラミンゴやサギではなく、鶴を星座名として選んだ背景には、こうした理由もあったのかもしれませんね。
Special Thanks
「つる座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.79-114, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.210, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8