暗い星の集まり!観察力をフルに発揮して見つけて!けんびきょう座
けんびきょう座は、1756年、フランスの天文学者ラカイユ(ラカーユ)によって設定されました。
当時のヨーロッパにおいて、顕微鏡は時代の最先端を行くハイテク機器。研究者や医学者がこぞってのぞき込んだのはもちろんのこと、王族や富裕層など、生活に余裕のある人々の間では趣味としても親しまれていた存在です。
実はけんびきょう座は、大きな星座ではあるものの、パッと目を引くような明るい星がなく、見つけることが非常に難しい星座です。
けんびきょう座を探す際には、本物の顕微鏡をのぞき込む時と同じような注意深さで、暗い星たちに目を凝らしてみましょう!
けんびきょう座の基礎情報
星座の名前 | けんびきょう(顕微鏡) |
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学名/読み方 | Microscopium/ミクロスコピウム |
略符 | Mic |
面積(順位) | 210平方度(66位) |
作ったひと | ニコラ・ルイ・ド・ラカーユ |
おすすめの 観測時期 |
秋/9月下旬 |
20時南中 | 9月30日 |
隣り合った星座 |
いて座 インディアン座 つる座 みなみのうお座 やぎ座 |
けんびきょう座の概要
けんびきょう座の特徴
前述通り、けんびきょう座は暗い星の集まりです。
けんびきょう座の中で最も明るい星は、4.7等星であり、これが、けんびきょう座を探すことを難しくしています。
しかも、けんびきょう座が姿を表すのは、南の空の低い位置(地平線近く)です。けんびきょう座を見つけるためには、「周囲に高い建物がない暗い場所」が最適です。
星座の中では新しく設定されたけんびきょう座ですから、伝説や神話も伝わってはいません。
けんびきょう座は、もともと星座が少なく寂しいエリアに、ラカイユがギュッと押し込んだ星座であると考えられています。
けんびきょう座の見つけ方
日本でけんびきょう座を見ようと思ったら、8月から10月の早めの時間に南の夜空を探してみましょう(9月下旬から10月の上旬にかけては、20時前後に南中)。
けんびきょう座は暗く、目立たない星座ですから、他の星座によるガイドが必須です。けんびきょう座を見つけるためには、やぎ座とつる座、いて座、そしてインディアン座などが役立ちます。
やぎ座の最も南寄りのω(オメガ)星(ヤギの前足にあたる星です)を南に辿っていくと、左右をつる座といて座に囲まれたエリアがあります。
その中央には、「ゆがんだ逆コの字型」のように並ぶ、暗い5つの星が発見できるはずです。この星々がけんびきょう座です。
さらに、観測場所が沖縄や奄美大島などであれば、けんびきょう座よりも南に、インディアン座のα(アルファ)星が見えることでしょう。
α星は、インディアン座の中で最も明るい星であり、インディアンが矢を構える手に位置する星です。
けんびきょう座の見どころ
けんびきょう座α星
けんびきょう座の恒星である「けんびきょう座α(アルファ)星」は、二重星です。
肉眼ではひとつの星に見えますが、望遠鏡 (口径20cm前後)で観察してみると、5等級と10等級のふたつの星に分けることができます。
NGC6925
NGC6925は、けんびきょう座といて座の間に存在する渦巻銀河です。
口径30cm前後の望遠鏡を使えば、縦長の銀河の姿が確認できるでしょう。
けんびきょう座の神話・伝説
けんびきょう座は18世紀にフランスの天文学者ラカイユが作った星座のひとつです。新しい星座なので、けんびきょう座にまつわる神話・伝説はありません。
おわりに
全体的に暗い星々のみで構成されている、ちょっぴり地味な印象のけんびきょう座。
けんびきょう座の周囲も、特別に美しい星雲や星団が見られるわけではないですし、あまり華やかなエリアとはいえません。
しかし、化学者になった気分でじっくりと望遠鏡をのぞき込み、世間ではあまり注目されていないけんびきょう座やその周りの星々を観察することも、楽しい体験となるのではないでしょうか。
Special Thanks
「けんびきょう座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.79-114, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.222, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8