天文ファンにお馴染みの「望遠鏡の照準線」!レチクル座




レチクル座(レティクル座)は、小さなひし形の星座です。
はるか昔、この星座は形そのままに「ひしがた」と呼ばれていましたが、18世紀にフランスのラカイユ(ラカーユ)によって「レチクル座」という名前が与えられました。
レチクル座の「レチクル」とは、望遠鏡や双眼鏡をのぞき込んだ時に見える照準線(十字線/目盛)を意味しています。
レチクルは本来、「ひし形をしたネット」や「網」を表す言葉として用いられており、日本でも1960年代までは、「レチクル座」のことを「こあみ座(小網座)」と呼んでいました。
レチクル座の基礎情報
星座の名前 | レチクル |
---|---|
学名/読み方 | Reticulum/レチクル |
略符 | Ret |
面積(順位) | 114平方度(82位) |
作ったひと | ニコラ・ルイ・ド・ラカーィユ |
おすすめの 観測時期 |
冬/1月中旬(南天) |
20時南中 | 1月14日 |
隣り合った星座 |
とけい座 かじき座 みずへび座 |
レチクル座の概要
レチクル座の特徴
レチクル座は小さく、控えめな星座です。レチクル座の中で最も明るい星は3等星のα星(アルファ星)であり、あとの星々は全て4等星と5等星です。
華やかな星に恵まれず、面積も狭いレチクル座は、広大な夜空の中では決して目立つ星座ではありません。
しかし、少々いびつながらも、本物のレチクルを連想させる十字型(ひし形)は分かりやすく、南半球の国々では広く知られた星座でもあります。
レチクル座の見つけ方
残念なことに、レチクル座は日本のほとんどの地域からは観測できません。
日本では、寒い季節に沖縄県の宮古島や石垣島辺りまで足を延ばせば、かろうじて見ることが可能ですが、それでも地平線スレスレにその姿を確認できる程度でしょう。
レチクル座をじっくりと観察したい場合には、南半球の国々(ニュージーランドやオーストラリアなど)へと旅をする必要があります。
レチクル座を見つける際には、ふたつの1等星が目印となってくれます。ひとつはりゅうこつ座のカノープス(α星)、もうひとつはエリダヌス座のアケルナル(α星)です。
どちらの星も、夜空の中でひと際明るく輝いていますので、見つけることは難しくありません。カノープスとアケルナルを一直線に結んでみると、そのほぼ中央付近に「やや歪んだひし形を描く星たち」が見つかることでしょう。小さいながらも分かりやすい形をしたこの星々が、レチクル座です。

レチクル座の周囲には、大マゼラン雲やかじき座、とけい座なども確認できます。中でも、美しい姿が人気の大マゼラン雲は肉眼でも見えるため、こちらを目印にするのもおすすめです。
レチクル座の見どころ
レチクル座ζ星
レチクル座ζ星(ゼータ星/ツェータ星)は、ふたつの星から成る二重星です。主星と伴星のどちらも、太陽に似た恒星であると考えられています。
レチクル座ζ星は5等級程度の明るさであり、それほど華やかな星ではないものの、肉眼でもふたつの星を確認することができるでしょう。
渦巻銀河 NGC1559

NGC1559 © ESA/Hubble&NASA / 出典:ESA/Hubble
レチクル座のα星の近くにある渦巻銀河が、NGC1559です。
NGC1559を観察するには、口径7.5cm前後の望遠鏡を用意しておくことをおすすめします。
レチクルの神話・伝説
レチクル座は18世紀にフランスの天文学者ラカイユが設定した星座です。新しい星座であるレチクル座には、特筆すべき神話や伝説などは存在しません。
レチクル座のモデルとなったのは、ラカイユが愛用した天体望遠鏡に張られていた「ひし形のレチクル(照準線)」であると伝わっています。レチクルが付いている望遠鏡や双眼鏡は、ラカイユのような天文学者にとっては仕事上の相棒とも呼ぶべき存在です。
ラカイユが、レチクルを星座として設定したいと考えたのも当然のことと言えるでしょう。
おわりに
日本では限られたエリアでしか見ることのできないレチクル座ですが、機会があったらラカイユの星空への情熱を感じながら、望遠鏡をのぞいてみてくださいね。
Special Thanks
「レチクル座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.145-178, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.228, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8