しし座の神話・伝説
しし座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する人食い獅子です。
英雄ヘルクレスによって退治されてしまいますが、ヘルクレスを憎むヘラによって夜空に上げられたと言われています。
しし座の神話・伝説
村人を困らす人食い獅子
ネメアの森に”人食い獅子”と呼ばれる獅子が棲みついていました。勇敢な者たちがこの獅子を倒すため森に入っていきましたが、誰一人として生きて帰ってくる者はいないと言われています。
困った村人は天上の大神・ゼウスにこの獅子をどうにかしてほしいと祈り続けました。そしてその願いを聞き入れたゼウスがヘルクレスを派遣するよう手配します。
彼はゼウスの息子で、8か月の時には毒を持った蛇をもてあそんだ末に、真っ二つに引き裂いてしまうくらいの力の持ち主でした。成人になった今、彼に力で敵うものはいないと言われています。
獅子と対峙するヘルクレス
ヘルクレスはネメアの森の中で一本の樫の木から棍棒を作り、奥へ奥へと入っていきます。森の深いところには大きな岩穴があり、村人たちはここに人食い獅子が棲んでいると噂していました。
獅子はいつもと違う匂いを感じ、のっそりと岩穴から姿を現しました。食事中だったのか口から血を流し顔は真っ赤な獅子がヘルクレスと対峙します。
ヘルクレスを憎むヘラの企みで愛する家族を殺してしまった彼は、その罪を12の試練で償う旅に出ることになりました。その試練のひとつであるこの獅子退治は、絶対やり遂げなければなりません。
「恨みはないがお前を倒さないと俺は赦してもらえないんだ」
人食い獅子に言い訳をするようにつぶやきました。獅子は言葉を理解せずに、ゆっくりとヘルクレスとの距離を詰めていきます。ヘルクレスは持っていた樫の棍棒を振り上げ、獅子の頭に思いっきり振り下ろしました。
獅子とヘルクレスの格闘
たしかな手応えはありました。ですが鈍い音を立てて折れたのは獅子の骨ではなく樫の棍棒の方です。獅子は怪物ティポーンから生まれたと言われ、とても固い毛皮と鋼鉄の牙と爪を持っていたのです。
獅子は牙をむき、前足でヘルクレスの体を押さえつけます。そして鋼鉄の爪で命を奪おうとするのですが、ヘルクレスはその攻撃をかわしながら獅子の首を掴んで締めあげました。
獅子は大きく体をねじり暴れますがヘルクレスがその腕を緩めることはありません。そのまま日が沈みまた日が昇り…3回ほど繰り返したのち、ようやく獅子は静かになり息絶えました。
そしてヘルクレスは獅子の爪を使って固い毛皮をはぎ取り身にまとうと、次の試練へと旅立っていきました。
獅子を称えたヘラ
獅子の亡骸だけが残されたネメアの森にヘラが降り立ちます。
獅子はヘルクレスの事情など少しも知りません。ですが結果的にヘラが憎んでいるヘルクレスを苦しめたことには変わりありません。そこでヘラは獅子を称え、夜空に輝く星座になるよう空にあげることにしました。
「……よく頑張ってくれましたね。空で安らかにおやすみなさい。」
おはなしにまつわる星座
ヘルクレスは罪を償うため、人食い獅子退治以外にも様々な試練を与えられました
- ヘルクレスヘルクレス座
- 12の功業を成し遂げた武勇に優れた英雄。