かに座の神話・伝説

かに座のモデルとなったのは、ギリシャ神話の一つ「ヘルクレスと怪物ヒドラの戦い」で登場する大蟹のカルキノスです。
カルキノスは、今にも退治されそうな親友のヒドラを助けるためヘルクレスに立ち向かった、勇気ある優しい蟹です。
かに座の神話・伝説
ゼウスの正妻・ヘラの嫉妬
大神ゼウスがいろんなところで愛人を作っていることに、正妻のヘラはいつもイライラしていました。夫を注意したところで相手は全知全能の神で、行動を改めることはまったくしません。そうなるとヘラの憎しみの矛先は、愛人やその家族に向けられるようになりました。
ゼウスの愛人アルクメネーと、その息子ヘルクレスも、ヘラの憎しみの対象でした。
ヘルクレスとヒドラの戦いを見守る大蟹・カルキノス
ヘルクレスが罪を償うために、12の試練に立ち向かっていた時のことです。相手のヒドラは何度も再生する9つの首と口から吐き出す毒で対抗しました。
ヘルクレスとヒドラの戦った場所はヒドラの生息する沼です。騒ぎを聞きつけた大蟹のカルキノスは、戦いの様子をずっと見守っていました。カルキノスはヒドラの親友で、それを知ったヘラはカルキノスを呼び出してささやきました。
「あなたは友達の力になりたいでしょう?友達の敵は試練のために、必ずまたやってくるわ」
カルキノスは彼女からヘルクレスがどれだけ非道で、残酷なやり方で親友の命を狙っているかを教えられました。一度目のヘルクレスと親友の対決を遠くから見守っていたカルキノスだからこそ、ヘラに言われたことを信じ、ヒドラの手助けをすることを心に誓います。
「困っているときには駆けつけるよ」
カルキノスはヒドラに手助けをするために沼ではさみを振り回します。どうすれば自分より体の大きいヘルクレスをやっつけることができるのかを、一生懸命考えます。
親友のために飛び出したカルキノスの最期
ある日、ヘラが言った通りヘルクレスがヒドラ退治にやってきました。戦いの中でヒドラは9つの首のうち8つの首を剣とたいまつによって落とされてしまいます。カルキノスはその姿を木陰に隠れて見守っていましたが、このままではヒドラがやられてしまうとヘルクレスの元に飛び出しました。
「ああ?何だこの蟹は…邪魔だな」
カルキノスはヘルクレスの足を攻撃しようと、自慢の大きなはさみを振り上げました。ですが、その自慢のはさみがヘルクレスの足を捕らえることはありません。ヘルクレスの踵がカルキノスの体を踏みつぶしてしまったのです。
カルキノスは親友を助けることはできず、そのまま息絶えました。まもなくヒドラもヘルクレスの手によって絶命してしまいます。
ヘルクレスの邪魔をしてほしいと蟹を誘ったヘラは少々心を痛めます。そしてあっけない最期を遂げたものの、彼の勇敢な姿を称えてカルキノスを夜空にあげることにしました。ヒドラもまたヘルクレスに敗れた後ヘラによって夜空にあげられたので、川の近くで今も仲良くしていることでしょう。
おはなしにまつわる星座
ヘルクレスは罪を償うため、ヒドラ退治以外にも様々な試練を与えられました
- ヘルクレスヘルクレス座
- 12の功業を成し遂げた武勇に優れた英雄。