おとめ座の神話・伝説
おとめ座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する農業の女神デーメーテール(デーメーテル)です。
デーメーテールの愛する娘ペルセポネが冥界の王にさらわれたことから、デーメーテールは深く悲しみ、大地は枯れ人々は飢えに苦しむことになります。
ゼウスの計らいで、親子は一年の三分の二を一緒に過ごすことができるようになり、このお話から四季がうまれたと言われています。
おとめ座の神話・伝説
冥界の王・ハデスに狙われるペルセポネ
オリンポス十二神の一人・デーメーテールは農業を司る女神です。デーメーテールは大神・ゼウスとの間にペルセポネという娘を生みました。母に大切に育てられたペルセポネはとても美しく成長します。
ペルセポネの美しさは地下深く冥界にまで伝わりました。冥界の王・ハデスはその噂を聞き、彼女を妻として迎えようとします。
デーメーテールは母として大切に育てた娘を、冥界になんて行かせたくありません。しかし相手はゼウスに次ぐ力の持ち主です。デーメーテールはペルセポネをシチリアに隠すことにし、ハデスが近づいてこないようその地のニンフ(妖精)に娘を守らせました。
ペルセポネはハデスの妻となる
「冥界の王であるこのハデスの妻になるというのが、そんなにも嫌なのか!」
ペルセポネを隠されたことを知ったハデスはとても怒ります。彼女の居場所を見つけ出し、ニンフと一緒に野原で遊んでいる時を狙ってその大地を割りました。
大地の狭間にペルセポネは落ちて行きます。深く暗い闇の世界へ、ただ真っ逆さまに…。こうしてハデスは本人の意思など関係なく、ペルセポネを妻に迎えることに成功しました。
悲しむ母の影響で大地が枯れる
この事にとても悲しんだのは母・デーメーテールです。愛しい娘が冥界で怖がっていないか、泣いていないか心配で仕方がありません。ペルセポネに会いたくてデーメーテールは泣き続けました。
「娘を…わたしの可愛い娘を返して…」
農業を司る女神であるデーメーテールが悲しむと、地上の草木は枯れ果てました。すると作物は何ひとつ採れません。地上の人々は飢え、命すら枯らしてしまいます。
ゼウスの計らいでペルセポネは地上へ
天界からその様子を見ていたゼウスは人々の叫びをハデスに伝え、ペルセポネをデーメーテールの元に帰すよう説得しました。ハデスはしぶしぶ承諾しますが、ただで帰すつもりはありません。
ハデスの元に来てからというもの、何一つ食べ物を口にしていなかったペルセポネに赤い実を12個持ってきました。
「これを食べたら母親の元に帰そう…」
「とても赤くてきれいな果物…いただきます…」
ペルセポネが赤い果実を口にするとハデスはにやりと笑いました。彼女が食べたのは冥界のザクロの実です。冥界の食べ物を口にしてしまったペルセポネはこのままでは地上に帰ることができません。
ハデスの罠に気づいたゼウスは娘を不憫に思います。そしてゼウスは力を使い、限られた期間だけでもペルセポネを地上に戻すよう取り計らってくれました。
母と娘の再開
まもなく再会した母娘はとても喜びます。デーメーテールの悲しみが消えると草木は育ち作物もとれるようになりました。しかし、ふたりはずっと一緒には居られません。
ペルセポネはザクロの実を12個のうち4個食べていました。そのため一年の三分の二は地上で母と暮らせますが、残りの三分の一は冥界に行かなければならないのです。
再び別れの時が来て、またもデーメーテールは悲しみに包まれます。
「必ずお母様の元に戻ります。待っていてくださいね」
ペルセポネはデーメーテールとの再会を約束してハデスの元に向かいました。
四季がうまれる
ペルセポネが冥界で暮らさなければいけない季節は、草木が枯れるために冬とよばれるようになりました。母と娘が再会を果たすと野に花が咲きだし、春がやってきて四季がうまれました。
おとめ座が夜空に上らない季節はその大地が凍り付き草木は枯れます。それは母が愛しい娘と会えないことに悲しんでいるからということなのでしょう…。