おひつじ座の神話・伝説
おひつじ座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する黄金の毛皮をもつ羊です。
羊は生贄にされそうになっていたプリクソス王子を助けます。プリクソスは感謝を込めて、羊の死後も黄金の毛皮を国の宝として守りました。
おひつじ座の神話・伝説
アタマス王と2人の妻・イノーとネペレー
ここはテッサリア。アタマス王にはテーバル王の娘・イノーという妻がいました。イノーはふたりの子供に恵まれましたが、アタマス王にとっては初めての子供ではありません。
今はアタマス王の元を離れましたが雲の精霊・ネペレーという前妻がおり、王とネペレーの間にもふたりの子供がいました。
「アタマス王の子供は私が生んだこのふたり。ネペレーの子供なんて邪魔だわ」
イノーは自分の子供可愛さにネペレーの息子・プリクソスと娘・ヘレを困らせようと企みました。
イノーの企み
まずイノーは農民を苗がよく育つとだまし、種を火で炙らせます。種は芽を出すことすらできず大不作となってしまいました。
「なんということだ…大神・ゼウスよ!私はどうすればよいのか!!」
アタマス王は凶作に頭を抱えてしまい、ゼウスに神託を伺います。そこにイノーがそっと耳元でささやきました。
「プリクソスを生贄に捧げよ、とゼウスが言っているわ」
イノーの悪さをアタマス王は知りません。まんまと愛妻の言葉を信じ、プリクソスを生贄にする準備を始めました。
羊に乗って空へ逃げるプリクソスとヘレ
「私の愛しい子供たちを遠くに逃がさなければ…」
あまりの事態にネペレーはプリクソスとヘレを継母・イノーから遠ざけるべく、ゼウスに助けを求めます。ゼウスは伝令神ヘルメスを使いに出し、黄金のヒツジをネペレーに届けます。ネペレーは羊をかりて雲の中へふたりを隠そうとしました。
この黄金のヒツジはふたりを背に乗せ空を駆けます。ネペレーの命令どおりまっすぐ空高く、イノーの手の届かない場所へ…。
「プリクソス、わたしたちの居た地上があんなにも小さく見えるわ」
ヘレは生まれ育った故郷がどんどん離れていくのをとても楽しそうに見下ろします。住んでいた家もふたりで登って遊んだ大木も、自分たちをいじめたイノーもどんどん小さくなっていきます。
ヘレとの突然の別れ
「ヘレ、しっかり掴まって!」
「大丈夫よ。見て!!あれが海ね!!なんて大きいのでしょう!」
浮足立つヘレにプリクソスが注意した次の瞬間、ヘレはバランスを崩し真っ逆さまに落ちていきました。プリクソスは必死に手を伸ばしますがヘレは海の中に姿を消してしまいます。
「お願いだ!ヘレを助けて!戻って!!」
黄金のヒツジに懇願するプリクソスですがヒツジは首を横に振り、ただただ天空を目指します。プリクソスはとても悲しみました。そしてあの時ヘレの腕を掴めなかった自分を責めました。
プリクソスは羊に感謝し、幸せに暮らす
「坊ちゃんは悪くないよ。嬢ちゃんの居場所はあの海だった。ただそれだけだよ」
黄金のヒツジはプリクソスを慰めながらさらに空高く飛び続けます。そしてコルキスという国に着きます。
コルキスのアイアーテス王はヒツジから事情を聞きプリクソスを温かく迎えました。悲しみに打ちひしがれるプリクソスを元気づけたのはアイアーテス王の娘・カルキオペー。プリクソスはカルキオペーの愛の元、黄金のヒツジとともに幸せに暮らしました。
そして黄金のヒツジが役目を終え息絶えたとき、その黄金の毛皮を国の宝として森奥深くにある樫の木につるし、眠ることのない竜に守らせました。
辛いときも悲しいときも側にいてくれた黄金のヒツジにありがとうの気持ちを込め、誰かに見つけてもらうその日まで…。