みずがめ座の神話・伝説

みずがめ座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する王子ガニュメデスです。
男性でありながら女性にも勝る美しさをもつガニュメデスは、大神・ゼウスに気に入られ、天上で給仕係をすることになります。
みずがめ座の神話・伝説
新たな給仕係を探すゼウス
天上にあるオリンポスの神々は毎晩のように飲めや歌えやの宴会をしていました。その給仕をするのはヘベという美しい女性だったのですが、ヘルクレスとの結婚のためオリンポスから離れることになったのです。
「うまい酒は美しい人に注がせて完成する!」
大神・ゼウスはそう言い切り、次の給仕に見合う人物を探すため自ら下界へ行くことにしました。
目をつけたのは王子・ガニュメデス
わしに姿を変えたゼウスが翼を広げて大空から見渡します。
都市トロイの上空を飛んでいた時でした。空の上からでもわかる金色に光り輝く人物を見つけたのです。ゼウスはその人物に狙いをつけ急降下しました。
「え!もう夜になったの?」
ゼウスに狙われたのはこの都市の王子・ガニュメデスです。地上にいる美しいとされる女性よりも美しいガニュメデスを暗闇に包み込んだのは、ゼウスの大きな翼でした。ガニュメデスの首元をくちばしでつかむとそのまま大空へと連れ去ってしまいます。
ゼウスとガニュメデスの交渉
何も説明のないままオリンポスに連れてこられたガニュメデスは、わしの変身を解いたゼウスを前に戸惑います。目の前には地上で全知全能の神と崇められているゼウスがいるのですから、冷静でいる方が難しいでしょう。ゼウスの前に座らされて遠くからはいろいろな神の視線を浴びながら、ガニュメデスは恐る恐る問いかけました。
「あの~僕はなんで連れてこられたのでしょうか…」
「うむ。宴会の席で給仕してくれる者を探していたのだ。君はとても美しい!もしここで働いてくれるなら永遠の命と若さを授けよう」
神に仕えることができるなんてこれほど名誉なことはありません。ガニュメデスは快諾しようとしましたが、ふと都市トロイを思い出しました。
「僕でよければ是非仕えさせてください!…ですが故郷の両親に何も言わないまま、ここに来てしまいました。それだけが心残りです…」
悲しそうな表情をするガニュメデスに、ゼウスは可哀そうになってしまいました。そこでゼウスは都市トロイの国王と王妃に説明するために再び地上に向かいます。
両親に別れを告げるガニュメデス
ガニュメデスの両親はいきなり姿を現したゼウスにとてもびっくりしました。ですが息子が今後神に仕えると説明され反対はできません。ゼウスはガニュメデスと同じ光を放つ黄金のぶどうの木を代償として、彼の両親に授けました。
「息子のことをよろしくお願いいたします」
こうしてガニュメデスは正式にオリンポスで神に仕えることになりました。ゼウスは頑張るガニュメデスの姿を夜空にあげ、両親がいつまでも息子を見上げられるようにしてあげます。
そしてガニュメデスの代償に授かった黄金のぶどうの木からは、彼の名にふさわしい美味なワインが作られるようになったということです。