うお座の神話・伝説

うお座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する女神アフロディーテと、その息子エロスです。
星座絵では、怪物テュポンから逃げる際に、魚に姿を変えて逃げた2人の姿が描かれています。
うお座の神話・伝説
女神アフロディーテと息子エロス
その昔、美の女神・アフロディーテがおりました。彼女はトロイア戦争を起こしてしまうほど気が強いですが、その美しさは誰もが目を見張るほどのものです。
そんな彼女にはエロスという息子がいます。背中に翼をはやし、彼の撃った矢は人の心を魅了してしまうものと言われています。
ナイル川で開かれた宴会
ある日、ふたりはナイル川の畔で開催された宴に招待されました。天上の神々が地上に降りてきて行う宴はとても豪華なものでした。太陽と音楽の神・アポロンが琴を奏で、音楽の女神・ミューズがその音に合わせて踊ります。
あちらこちらに用意されている美味しい料理にエロスは気持ちが高ぶります。あっちに行っては果物をつまみ、そっちに行っては飲み物をいただきます。
「エロスや、少しは落ち着きなさい」
アフロディーテの言葉にエロスは両手に食べ物を持ったまま戻ってきます。息子を少し落ち着かせようとアフロディーテは川のそばを散歩しようと提案しました。
「お魚さんいるかな?」
母の顔を見上げながら散歩を楽しむエロスの無邪気さにアフロディーテは優しく、そして少々困ったような笑顔を返しました。
怪物テュポンの襲来
その時です。宴会場の方から悲鳴が聞こえてきました。
「何があったのだろう…。ぼくが様子見てくるよ!」
エロスは母が制する間もなく背中の翼で空高く舞い上がります。目を凝らしてみると、たくさんの頭を持つ大きな怪物が宴を楽しんでいた神々を襲っていました。
怪物の名前はテュポンといい、神々ですら生きて帰ることの難しいといわれる怪物です。その怪物の手で、上半身がヤギで下半身が魚の形に変身した羊飼いの神・パンが今にもその命を落としそうに逃げまどっています。
「エロス、こんなところにいないで早く逃げるのだ」
逃げるために鳥へと変身した大神・ゼウスに助言され、エロスは急いでアフロディーテの元へと戻ります。
変身して逃げる親子
「お母さま!ぼくたちも逃げよう!!」
何が起きていたのかを簡単に母に伝えるとアフロディーテは近くの川に逃げ込むために魚に変身するよう息子に命じました。すぐにエロスは魚に姿を変えますが、アフロディーテはこの混乱した場所ではぐれずにちゃんと逃げられるかが心配になります。
「そうだ。このリボンで互いの尾を結びましょう」
髪に巻いていた長いリボンをほどき、エロスの尾に結びます。そして反対側のリボンの端を自分の足に結び付けました。
「エロスや、絶対に離れたらダメよ!」
アフロディーテも魚に変身して互いがしっかりとリボンでつながっていることを確認すると、勢いよく川へと飛び込みます。
こうして二人ははぐれることなく怪物・テュポンから逃げることができました。
アフロディーテとエロスをつないでいたリボンは親子の絆そのものなのかもしれません。
おはなしにまつわる星座
このナイル川での宴会の出来事は、他の星座の神話・伝説にもなっています。
- 羊飼いの神・パンやぎ座
- 怪物テュポンに今にも襲われそうになっていた羊飼いの神。