へびつかい座の神話・伝説
へびつかい座のモデルとなったのは、ギリシャ神話に登場する名医アスクレピオス(アスクレーピオス)です。
幼い頃から頭のよかったアスクレピオスは医学を究め、ついに禁断の術にも手を出してしまいました。
へびつかい座の神話・伝説
博学多識なアスクレピオス
太陽の神・アポロンとテッサリアの王女・コロニスの間に生まれたアスクレピオスという少年がいました。彼は幼いころからとても頭が良かったと言われています。
ある日、カラスの嘘に騙されてアポロンがコロニスを殺してしまいます。幸せな日々を送っていたアスクレピオスでしたが、その日を境に賢者キロンの元で暮らすことになりました。
「師匠、ぼくは人の命を救える大人になりたいです!」
あらゆる学術に長けていたキロンからさまざまな知識を学びましたが、その中でも特に医学を学びたいとアスクレピオスは言いました。それは母を早くに亡くしてしまったからなのかもしれません。
アスクレピオスはどんどん知識を吸収し、ギリシャ一番の名医といわれるほどに成長しました。キロンの元を去ってからも、あらゆる病気やけがを負った人たちの手当てをしてその技術を極めていきます。
禁断の術を究めてしまう
重いけがや病気をした人々はアスクレピオスの所に助けをもとめてやってきます。アスクレピオスはその人々を治しているうちにとうとう死者を生き返らせる術を究めます。
人々はとても驚きましたが、亡くしてしまった大事な人を生き返らせることができると大いに喜びました。
「これで私が母を亡くした時のように悲しむ人がいなくなる!」
自分が経験した悲しみを少しでもなくすかのように、アスクレピオスはどんどん死者を生き返らせていきました。噂を聞きつけた人たちが彼の元に列をなします。
冥界・ハデスの怒り
それに苦言を呈したのは冥界の王・ハデスでした。アスクレピオスのせいで本来冥界に来るはずの人々が来ないのです。これではハデスの統べる冥界の国が衰えて行ってしまいます。
「俺の国に来るはずの死者が来ないなんて!どうにかしてくれ!」
ハデスは大神・ゼウスに相談しました。たしかに生まれたなら必ずいつか死を迎えるというのが人です。冥界の国が衰えてしまうのもそうですが、このままでは地上も人で溢れかえってしまいます。
ゼウスが審判を下す
ゼウスはハデスの訴えを受け入れ、アスクレピオスを殺すことにしました。人のためではありますが人がしてはならないことをしてしまったアスクレピオスは、ゼウスが放った一撃の雷に打たれてあっけなくその生涯を終えました。
こうして人と死者のバランスは元通りになりハデスとゼウスは一安心です。人を生き返らせるという禁忌を犯してしまったものの、病気で苦しむ人や悲しむ人を少しでも減らしたいという意思は素晴らしいものです。ゼウスは彼の才能を惜しんで、アスクレピオスの姿を夜空にあげることにしました。
そんなアスクレピオスは死後も時々蛇に姿を変え、地上に降りては困っている病人を助けていたとかいないとか…。
おはなしにまつわる星座
- 賢者・キロンいて座
- 半人半馬のケンタウルス族。博学多才なアスクレピオスの師匠。