てんびん座の神話・伝説
てんびん座のモデルとなったのは、正義の女神・アストレアが持つ善と悪を計る天秤です。
アストレアは天秤で死者の魂を計り、善より悪が重たい魂を冥界に送る役目をはたしていました。
てんびん座の神話・伝説
善と悪を計るアストレアの天秤
人には善と悪があります。それを計る天秤の持ち主・アストレアは正義の女神と呼ばれています。
太古の昔、神々は人々と共に地上で暮らしていました。人々は神々を敬い、争いごともない平和な日々を送っています。アストレアも地上で暮らしていた神のひとりでした。
アストレアはその天秤で死者の魂を計り、善より悪が重たい魂を冥界に送る役目をしています。
「今日も平和ね~。天秤も善に傾くばかりだわ」
幸せそうに暮らす人々と天秤を交互にみながらアストレアはつぶやきました。悪い人を冥界に送る仕事すらなくなりそうなほど平和な日々です。それはとても暇なことですが人々にとっては幸せなことだとアストレアは思っていました。
パンドラによって世界に悪が散らばる
しかしひとりの女性が地上に現れて事態が急変します。
その女性の名前はパンドラ。大神・ゼウスの命令により粘土で作られた人です。パンドラはこの世で一番美しく、知恵や美声を持ち、なにより好奇心を与えられました。
パンドラが預かっていた”絶対開けてはいけない箱“の中には、病気・妬み・盗み・憎しみなど人を苦しめるものが閉じ込められています。しかし彼女は好奇心からその箱を開けてしまいました。中から飛び出したあらゆる悪はすぐに世界中に広がっていきます。
「あいつは良い物を持っているのになぜ俺にはない!?力ずくでも奪ってやろうか」
「ああ、わたしは誰よりも美しいわ~。羨ましいでしょ?」
「俺は誰よりも偉い!神よりも偉い!ひれ伏せ!!」
々は働くことをやめ、人のものを奪い、そして争いを始めました。アストレアの天秤が悪に傾きます。たくさんの死者の魂を冥界に送らなければなりません。
アストレアが役目を果たすべく走り回っている中、他の神々は次第に人々を見限り天界に帰っていきます。
終わらぬ戦に絶望するアストレア
地上に神がアストレアただひとりになっても、彼女は人の世界に留まって人々を諭しました。
「皆さん!助け合いましょう!人を殺めて良い事なんてひとつもないです!」
しかしその声は人々には届きません。悪はもっと広がり、人々は武器を作り出し、大きな戦争が始まりました。人々は狂ったように戦いに明け暮れ、殺し合い、人のものを奪っていきます。人のために尽くしてきたアストレアは絶望します。
「もう地上はダメだわ…。わたしの声を聞く者はもういない」
アストレアもとうとう地上を見限ってしまいました。人々に悪を改めさせるのを諦め、天界に帰って行ってしまいます。
神が去った地上はいっこうに変わることなく、今でも争いや憎しみが溢れています。アストレアはそんな人々の姿にためいきをつきつつ、天秤を傾けながら空から見ていることでしょう。