天文学者愛用の計測器!獅子と海ヘビに守られた宝物ろくぶんぎ座




ろくぶんぎ座の「ろくぶんぎ(六分儀)」とは、星の位置を量ったり、航海中の現在地を知るためなどに用いられた道具です。
ろくぶんぎ座を設定したのは、ポーランドの天文学者であるヨハネス・ヘベリウス(ヘヴェリウス)。
ヘベリウスは、愛用していた六分儀が火事で燃えてしまった悲しみから、夜空の星々にその姿を重ねたと伝わっています。
ヘベリウスの愛のこもったろくぶんぎ座ですが、星座自体の輝きは弱く、春の夜空の中では決して目立つ存在ではありません。
ろくぶんぎ座の基礎情報
星座の名前 | ろくぶんぎ(六分儀) |
---|---|
学名/読み方 | Sextans/セクスタンス |
略符 | Sex |
面積(順位) | 314平方度(47位) |
作ったひと | ヨハネス・ヘヴェリウス |
おすすめの 観測時期 |
春/4月中旬 |
20時南中 | 4月20日 |
隣り合った星座 |
うみへび座 コップ座 しし座 |
ろくぶんぎ座の概要
ろくぶんぎ座の特徴
ろくぶんぎ座のβ星・α星・γ星、この3つの星を繋げると、ひらがなの「へ」の字のように見えます。 この形は、実物の六分儀の形に似ています。
そのため、ろくぶんぎ座の星の並びから六分儀の姿を思い浮かべることは、それほど難しくはありません。
しかし、ろくぶんぎ座は小さな星座であり、構成している星も、輝きの弱い4等星や5等星ばかりです。
いくら実物の六分儀と形が似ているとはいえ、暗い星々で構成されたろくぶんぎ座を見つけることは、慣れていないと難しいのではないでしょうか。
ろくぶんぎ座の見つけ方
ろくぶんぎ座を観測するのであれば、春に南の空を見上げてみましょう。
日本では、2月から6月頃にかけて、ろくぶんぎ座の姿を見ることができます(20時南中は、4月20日です)。
しし座、うみへび座が、ろくぶんぎ座を見つけるための分かりやすい目印です。

しし座の前足で輝くレグルスと、うみへび座の心臓に位置するアルファルド(別名コル・ヒドレ)に囲まれたエリアに、ろくぶんぎ座はあります。
「へ」の字を描くろくぶんぎ座は、ちょうどうみへび座に背負われたような形で、控えめに輝いています。
輝きの弱いろくぶんぎ座とは対照的に、強く白い光を放つレグルスは1等星、赤いアルファルドは2等星ですので、どちらの星も簡単に見つけることができるでしょう。
ろくぶんぎ座の見どころ
NGC3115
NGC3115は、1787年に発見されたレンズ状銀河です。(スピンドル銀河や紡錘銀河、糸巻き銀河とも呼ばれます)
中心部がポコッと膨らんだNGC3115の姿は、確かにレンズの形を連想させます。
銀河系の数倍の大きさを誇るNGC3115を望遠鏡(口径8cm程度)で覗いてみると、ボーっと光る白い円盤のような姿が確認できることでしょう。
NGC3115の内側には、成長の止まった超大質量ブラックホールがあるとみられています。
ろくぶんぎ座の神話・伝説
ろくぶんぎ座は17世紀に作られた、新しい星座です。そのため、ろくぶんぎ座にまつわる神話はありません。
しかし、ろくぶんぎ座が作られた経緯にはドラマがあったようです。
1697年、ポーランドの天文学者へべリウスの自宅は火事で焼失してしまいました。そのとき、へべリウスが愛用していた六分儀も燃えて無くなってしまったのです。
ヘベリウスは、「大切な六分儀を二度と失わないように」という願いを込めて、しし座とうみへび座という2頭の怪物たちの間に、ろくぶんぎ座を設定したといわれています。
そう考えながら夜空を眺めてみると、うみへび座の背に乗せられた小さなろくぶんぎ座を、頼もしいしし座が見張っているようにも見えてきます。
どちらもヘルクレスに退治されてしまったとはいえ、しし座は「狂暴な人喰いライオン」、うみへび座は「9つの頭を持つ怪物」を表した星座です。
ヘベリウスが期待したように、この怪物たちから六分儀を奪うことは誰にもできそうにありませんね。
おわりに
ろくぶんぎ座は目立つ星のない星座なので、空の暗い場所でないと見つけるのに苦労するでしょう。
ろくぶんぎ(六分儀)は星を観測するための道具で、ろくぶんぎ座を設定したへべリウスにとっても大切なものでした。
春の夜空に、しし座のレグルスとうみへび座のアルファルドを見つけたら、「あの間にろくぶんぎ座があるんだなあ」と思いを馳せるのも粋かもしれませんね。
Special Thanks
「ろくぶんぎ座の見つけ方」に掲載している画像の背景の星図は、ToxsoftさまのStella Theater Proを使用して作成しました。
Toxsoft: https://www.toxsoft.com/
- 沼澤茂美・脇屋奈々代 著『星座の図鑑』(2017)
- pp.9-40, 誠文堂新光社.
- 長島晶裕/ORG 著『星座の神々 全天88星座の神話・伝承』(1999)
- p.192, 新紀元社.
- 国立天文台「星座名・星座略符一覧(星座名の50音順)」(2019)
- https://www.nao.ac.jp/new-info/constellation.html 参照:2019-7-3
- Astro Commons「星座境界線」(2016)
- http://astro.starfree.jp/commons/constellation/boundary.html 参照:2019-7-8