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こと座の神話・伝説

ギリシャ神話では、音楽の名人だったオルフェウス竪琴が、こと座になったといわれています。

オルフェウスの竪琴

最愛の妻を亡くしたオルフェウス

オルフェウスは音楽の神・アポロンの息子。オルフェウスが奏でる琴の音色は、人間はもちろん、森の動物たちや木々をも魅了しました。その美しさは、どんなに荒れ狂った川でさえも鎮めてしまうほどです。

やがてオルフェウスは木の精霊・エウリュディケと愛し合い、結婚しました。二人は仲睦まじく暮らしていましたが、幸せな生活は長く続きませんでした。

エウリュディケが草むらに身を潜めていた毒蛇を踏みつけ、噛まれて死んでしまったのです。最愛の妻を亡くしたオルフェウスは嘆き悲しみました。

「エウリュディケがいなければ生きていけない…彼女を取り戻すためなら、どんな危険も冒そう」

こうしてオルフェウスはエウリュディケを求めて、冥界に続く洞穴へと単身飛び込んだのです。

冥界への旅・渡し守のカロン

どのくらい歩いたか分からなくなるほど長い間、暗い洞穴の中をひたすら進んでいくと、あの世とこの世を隔てる川が黒々と横たわっているのが見えました。いままさに、あの世への舟が出発しようとするところです。

オルフェウスは渡し守のカロンに、舟に乗せてくれるように頼みましたが、

「生きているものを向こう側に渡すなど、とうていできない相談だ。」

と断られてしまいました。

「そこをどうか、私を乗せてほしい。どうしても妻を連れ戻したいのです。」

オルフェウスが琴をかき鳴らして妻を慕う歌をうたうと、カロンはだまって舟に乗せてくれました。

冥界への旅・番犬ケルベロス

あの世の河岸にたどり着いたオルフェウスの前に、今度は頭が3つもある巨大な犬が立ちふさがりました。冥界の番犬・ケルベロスです。

ケルベロスは鋭い牙をのぞかせてオルフェウスに獰猛に吠えかかります。

「どうしてもここを通り抜けて妻に会いたいんだ。頼む・・・」

オルフェウスが願いを込めて琴を奏でると、ケルベロスはたちまち大人しくなり、オルフェウスのために道を開けました。


それから幾度も亡者たちが現れてオルフェウスの行く手を遮ろうとしましたが、オルフェウスは決して諦めません。何度も何度も歌をうたいました。

妻への愛が込められた琴の調べに亡者たちも感動し、けっきょく誰ひとり彼を止めることはできなかったのです。

冥王・ハデスとの約束「決して振り返るな」

オルフェウスは冥界の王・ハデスの前に進み出て、琴を響かせながら必死に訴えました。

「どうか私の妻をお返しください。お願いです。」

しかしハデスはオルフェウスの琴を聞いても、厳しい顔をしたままです。

「死んだものを生き返らせることは冥界の掟に反する。許せば世のことわりを曲げることになるのだ。断じてできぬ。」

これを隣で聞いていた妃のペルセポネはオルフェウスがかわいそうでなりません。はらはらと涙をこぼしてハデスに乞いました。

「あなた、どうかこの方のために、エウリュディケを生き返らせて差し上げて。」

妃にそこまで頼まれてはハデスも折れざるを得ません。とうとうオルフェウスの望みを聞き入れることにしました。

「わかった、エウリュディケをお前に返してやろう。ただし、地上にたどり着くまで決して妻のほうを振り返ってはならぬぞ。」

オルフェウスは喜びに目を輝かせ、強く頷きました。

約束を守れなかったオルフェウス

オルフェウスは背後のエウリュディケを気遣いながら、地上へと引き返していきました。

エウリュディケは、たしかに後ろからついて来ているはずなのですが、足音もしなければ気配もないので、オルフェウスは不安でたまりません。

振り返って妻の無事を確認したい衝動に何度も駆られましたが、オルフェウスはハデスとの約束を守るために我慢しました。


歩いて歩いて、ようやく地上の光が差し込んで見えたとき、オルフェウスは嬉しくて思わず後ろを振り向いてしまいました。

そのときオルフェウスが見たのは、深い闇に飲まれるようにして冥界へと引きずり戻されていくエウリュディケの姿。

オルフェウスは慌てて来た道を引き返し、もう一度カロンに頼みこみましたが、七日七晩にわたって琴をひいても舟に乗せてはくれませんでした。

仕方なく地上に戻ったオルフェウスは、エウリュディケを思う悲しい旋律を響かせながら、野山をさまようことしかできません。

「私はなんてバカなことを・・・せっかく取り戻したエウリュディケを失ってしまうなんて・・・」


ある日、酒の神・ディオニュソスの宴で酔っ払った女たちはオルフェウスを見つけると、琴を弾くよう強要しました。

オルフェウスがこれを拒むと、女たちは怒り狂い、オルフェウスを八つ裂きにしてしまいました。

大神ゼウスはオルフェウスを憐れんで、彼の竪琴を拾いあげて星座にしたということです。

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