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私たちは星の本当の明るさを知らない?見かけの等級と絶対等級とは?

「等級」とは、星の明るさを表す単位です。

私たちが日常的に「等級」と呼んでいる単位は、正確には視等級実視等級といいます。

この視等級(実視等級)、星の本当の明るさを表しているわけではないことをご存じでしたか?

どんなに明るく輝く星であっても、地球から離れれば離れるほど、その光は弱く儚く見えてしまうものです。反対に、地球から近ければそれだけ明るく見えることでしょう。

星の明るさは地球からの距離に左右されるため、一般的に用いられる視等級は、人間の尺度で測った見かけの等級なのです。

「見かけ」ではない星本来の明るさを表すためには、絶対等級という単位を使う必要があります。

「等級」「絶対等級」と間違われやすいのが、星を明るさごとに分類した「等星」です。

「等星」については、こちらのページで解説しています。

星の明るさを表す「等星」と「等級」。ふたつの違いを解説します!

「見かけの等級」は星本来の明るさを表していない?

私たちが日頃使っている「等級」という単位の正式名称は、視等級、もしくは実視等級。もっと柔らかい表現では、見かけの等級見かけの明るさと呼ばれることもあります。

  • シリウスは-1.46等級
  • こと座のベガ(おりひめ星)は0.03等級(※1)

など、私たちがよく知る星々の等級は、「地球上から見た時の明るさ」にすぎません。

同じ明るさで輝いている星同士であっても、地球からの距離の違いによって、「地球上から見える明るさ」に差が出てしまうためです。

「明るさ」というものは、ごく近い場所で見た場合と、遥か遠くから眺めた場合とでは異なります。

例えば、懐中電灯の光を間近で見ると、目がおかしくなりそうなほどにまぶしく感じますが、遠くから見るとボンヤリと光っているようにしか見えません。

もちろんこの現象は、夜空の星々の光にも当てはまります。

(※1) ベガの明るさは限りなく0等級に近いため「ベガ=0等級(0.0等級)」と表現されることもあります。

ここに、「星A」と「星B」というふたつの星があったとしましょう。星Aと星Bは、どちらも同じ大きさを持ち、全く同じ明るさで輝いています。

しかし、星Aは地球からとても近い場所に位置し、星Bは地球から非常に離れた所に存在します。

この時、地球上の私たちからは、星Bよりも星Aの方が明るく見えるはずです。

その結果として、実際には同じ明るさの星同士であっても、「星Aは1.0等級」「星Bは3.5等級」という具合に、等級の数値に差が生まれてしまうのです。

視等級はあくまでも、地球上に住む私たちから見た場合の明るさであって、星の本当の明るさを表している訳ではありません。つまり「見かけの等級」というわけです。

星の実際の明るさを示す「絶対等級」

星の実際の明るさを示すためには「絶対等級」という単位が用いられます。

絶対等級は「もしも、地球から32.6光年離れた場所に星を配置したら、どの程度明るいか?」を表した単位です。

もちろん現実には、星々と地球との距離はさまざまです。しかし「地球から32.6光年(※2)離れた場所にある」という平等な条件に当てはめて計算することで、星々の実際の明るさを導き出すことが可能になります。

(※2) 「32.6光年なんて、ずいぶんと中途半端な数字だな」と思う人も多いのではないでしょうか?実は32.6光年は、天文学でよく使われる距離の単位「パーセク(pc)」に直すと「10パーセク」という非常にキリの良い数字になるのです。

例えば、全天で一番明るい「おおいぬ座のシリウス」の実視等級は-1.46等級ですが、絶対等級は1.42等級です。

おおいぬ座 シリウス © NASA, ESA, H. Bond (STScI), and M. Barstow (University of Leicester) / 出典:ESA/Hubble

また、まぶしく輝く太陽の実視等級はなんと-26.7等級!(※3)

しかし、地球から太陽までの距離を32.6光年と仮定すると(※4)、地球上から見た太陽の明るさは4.8等級にまで下がってしまいます。

つまり、太陽の絶対等級は4.8というわけです。

※実際の太陽は、地球よりもはるかに大きい

太陽 地球との距離が近いため明るく見えるが、太陽と同じ距離にシリウスがあったら、シリウスの方がもっと明るい。

(※3) 「等級」の数字は、小さければ小さいほど、その星が明るいことを意味します。つまり、0.03等級のベガよりも、-1.46等級のシリウスの方が明るく、-26.7等級の太陽はシリウスよりもさらに明るい、ということになります。

(※4) 地球から太陽までの実際の距離は、およそ1億4960万kmです。これを光年に直すと0.00001581光年、パーセク(pc)では0.000004848パーセクという非常に小さな数字になります。

まとめ

私たちが日々見上げている星たちの明るさが、実際とは違っているなんて、びっくりした人もいるのではないでしょうか?

等級には、見かけの等級だけでなく、星の本当の明るさを表す絶対等級もあるのだと覚えておくと、星好きさん同士での話題も広がりそうですね。

「シリウスの絶対等級は1.42等級だよ」なんてサラッと言えたら、ちょっとカッコいいかも?

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